密謀(上)( 下)

  

 今年のNHK大河ドラマ「天地人」の主人公は越後・上杉家の智謀のl将、直江兼続。原作は火坂雅志だが、直江兼続については藤沢周平も書いていることを知って、こちらを読んでしまった。

 秀吉の遺訓を次々と破って我が物顔の家康に対抗するため、兼続は肝胆相照らす石田三成と徳川方を東西挟撃の罠に引き込む密約を交わした。しかし、実際に三成が挙兵し、世をあげて関ヶ原決戦へと突入していく過程で、上杉勢は遂に参戦しなかった。なぜなのか--。

 兼続の慧眼、戦略の裏には情勢を的確に見抜くための情報収集があった。草(忍びの者)を手足の如く使い、敵方の動きを正確に捉え、それを基に分析し、判断を下した。正確な情報なくして的確な判断を下せないのは昔も今も変わらない。

 物語の出だしが秀抜である。いきなり忍者同士の壮絶な戦いから始まる。敵を倒した兼続配下の草が行き倒れで死んだ母者に付き添っていた10歳の牧静四郎と妹まいを助け、静四郎は剣士、まいは兼続の妻・お船の下で育てられる。特に静四郎の成長ぶりがすがすがしく、物語に深い味わいを出していて、流石藤沢周平である。

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