百観音温泉

 今や石を投げれば当たるほど多くなった天然温泉。煮えたぎった火山の上に立地している日本は1500mも掘り進めば、よほどのことがない限り、温泉層にぶちあたる。そう思っていたから、友人にこの百観音温泉(埼玉県北葛飾郡鷲宮町)が「美人の湯」として名高いなどと聞いても、話半分だった。

 それでも気にはなっていたので、きっかけでもあればと思っていたら、今日がそのとき。2時間ほど車を走らせてたどり着いたら、街中の道路沿いに建つどこといって代わり映えしない。「これじゃ、チェーン店の極楽温泉と同じ。2時間も車を走らせてくるだけの値打ちないな」と失望感が先立つ。

 毎分1000の日本一の湧出量を誇る上、源泉温度57.0度で加温加水を行わない源泉掛け流し自噴温泉。神経痛、筋肉痛、関節痛などに効能があることから、「近くの湯治場」と銘打っているのもあながち、間違ってはいないだろう。しかし、たった一度浸かっただけで、それが確認できるとは思えない。

 そんなことを考えていたら、この温泉が人気があるのは「美肌効果が高い」ことにあることが分かってきた。お湯に浸かっているときはそんな強く感じなかったものの、時間が経つにつれて、肌のしっとり感、すべすべ感を実感できたからだ。

 泉質は弱アルカリ性(PH7.64)だが、含まれているナトリウムイオンとカルシウムイオンの量が半端でないくらい多い。これらが多いと皮膚の表面上で、皮脂のカルボン酸がナトリウムイオンやカルシウムイオンと反応、カルボン酸ナトリウム、カルシウム塩を形成する。

 カルボン酸ナトリウムは界面活性剤で、いわゆる「石鹸」。肌に滲み込んで汚れをはがし、乳化するするので肌は「しっとり」。カルシウム塩にはベビーパウダーのような作用があるため、湯上り後に「すべすべ」した感じになるという。

 日本で3大美人の湯と言われるのは川中温泉(群馬県、石膏泉)、龍神温泉(和歌山県、重曹泉)、湯の川温泉(島根県、単純泉)。いずれも弱アルカリ性で、ナトリウムイオンとカルシウムイオンを含んでいる共通点がある。そこで、百観音温泉が言いたいのは「泉質的には当温泉の方がこれらの成分が多く、美肌効果も高い。

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