栗きんとん

 栗きんとんと言えば、美濃・中津川の栗きんとん本家「すや本店」(岐阜県中津川市新町2-40)が代名詞のようである。同じ中津川でも「すや西木」(中津川市中津川)には何年か前に一度行ったことがあるが、本店には行かなかった。夏だったからかもしれない。

 創業は元禄年間。江戸から下ってきた1人の武士が、この宿場町に住みつき、「十八屋」の屋号で酢の店を開いた。この酢屋が100年後に菓子屋に変わったという。

 中津川の町の中を旧中仙道が通っている。木曽路の入口にあたる古い宿場町で、「江戸の帰る弥次さん喜多さんも、京に向う貝原益軒も、木曽の山道にかかる中津川宿でひといき入れております」(主人敬白)。

 近くに聳える恵那山(2191m)が美濃と信濃を分ける分水嶺。広大な恵那山麓の至るところに植えられている木曽の山栗から育った栗を蒸し、「蒸した栗をたて割りにして、竹べらで実をほじくり出す。それを潰して少量の砂糖を加えながら煮る。煮上がったのを、茶巾絞りにする。気抜けがするほど簡単な加工だ」。

 これが実にうまいのである。世の中にはうまいものがたくさんあることを改めて知った。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

東京日誌Ⅱ

Previous article

可喜庵
東京日誌Ⅱ

Next article

富士山