サルガド展

  報道写真家セバスチャン・サルガド氏の写真展「アフリカ」を観た。東京都写真美術館(東京都目黒区三田1-13-3)。被写体は部族間紛争と暴力、それに付随する難民、エイズやマラリアなどの病苦。貧困と砂漠化・干ばつ、そして重量感のある景観や野生動物が住み、人間の暮らす自然環境。観て美しい対象よりも、悲惨・不合理・不条理に満ちた世界だ。

 展示された1973年から2006年まで33年間の写真100枚はアフリカの歴史の変遷をたどる。サヘルの干ばつで流民となったニジェールの人々や所有していたラクダをすべて失った難民キャンプのツゥアレグ族で1973年は始まり、2006年はナイル川の水で満たされたゲル運河の沼地で魚を獲るスーダンで終わる。

 70年代半ばから80年代、90年代は紛争ばかりだ。ルワンダ難民、スーダン難民、エチオピア難民。国外に逃れた人々を難民と称するが、国内で難民状態に置かれている人々も多かった。1人の写真家がこれほど長期間にわたってアフリカを撮り続けてきたのも珍しい。

 「暗黒大陸」と呼ばれたアフリカに光が差し込み始めたのだろうか。スーダン・ダルフール紛争やソマリア内戦は依然大きな問題であり続けているものの、全体としては改善に向いつつあり、経済発展の希望も見え始めているようだ。

 会場に出掛けたのは最終日前日の午後2時すぎ。少し列ができ始めていたが、30分もしないうちに1時間弱待ちの入場制限がかかった。これだけ、アフリカに関心を持つ人たちがいることに少しびっくりした。しかし、すぐに喜ばしいことと思い直した。

 サルガド氏は1944年にブラジルで生まれ、サンパウロ大学で経済学修士号を得たあと、軍事政権下の祖国を逃れてパリに居を移した。パリ大学で農業経済学博士課程を修了後、ロンドンに本部を置く国際コーヒー機構に就職。そこでアフリカに派遣され、深いつながりが生まれた。その後写真家に転進し、サハラ砂漠の南、サヘル地域の干ばつと飢餓の写真で国際的に名前を高めた。

 NHK日曜美術館がサルガド展を取り上げている。

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