鳩山・小沢2トップ辞任

 民主党が最後に選択したのは究極の選挙対策だった。鳩山由紀夫首相が2日午前の党両院議員総会で退陣を表明し、小沢一郎幹事長にも辞任を求め、同氏もそれを了承した。昨年9月に発足した鳩山政権の2トップが職を辞した。

 仕事をしながら、NHKを見ていたら、9時過ぎの段階でもう既に鳩山首相が辞意を表明したことを報じていた。議員総会が緊急開催され、首相が演説を行うと決まった段階で、大方の政治記者らは首相退陣に気づいたはずだ。取材の現場から遠ざかった者にはニュースが唯一の情報源だが、それにしても、前日まで強く続投意欲を見せていた首相。政界はまさしく、一寸先は闇である。

 鳩山首相は沖縄の米軍普天間基地問題の迷走、社民党の連立政権離脱、「政治とカネ」の問題が辞任の理由と説明した。世論調査で鳩山・小沢両氏には「辞めろコール」が高まっていただけに、同時辞任を打ち出せば、世論の支持を繋ぎとめることができると考えてもおかしくない。

 民主党にとっては2トップの辞任はインパクトの大きなてこ入れ策だ。これ以上のものはない。これをテコに反転攻勢に打って出る構えだ。世論からみれば、首相退陣は無責任極まりないと映る半面、イライラの根源だった2トップが少なくとも表面から消えたことで溜飲を下げることができたのは間違いない。

 民主党はもちろん、それが狙いだろうが、やはり、首をすげ替えたからといって、民主党の体質が変わるわけではないと考えるべきだろう。政党として欠点ばかりが鼻がつくものの、発展途上だということを考えれば、たった1年で政権交代の成果を求めるのは民主党に酷な気がしないでもない。

 自民党には民主党以上のもっと大きな欠点があったし、それも長期間にわたって是正する努力を怠ってきたのも事実だ。民主党もひどいが、自民党はもっとひどかったからだ。しかし、主義主張が異なっても、人間のやることにそんなに差があるとは思えない。

 とりわけ、政治家という人種は自分をいかに高く売り込むか、いかに強くアピールするかを考えるのが仕事である。仕事の全部とは言わないが、根底にはそれがあるはずだ。国民のための政治を志向する心構えはあるにしても、根底に眠るのは権力欲である。そうした社会や国民へのアピールを通じて、選挙民に自分の名前を投票用紙に書いてもらい、そうした選挙を戦い抜いて初めて国政に参加する機会を獲得できるのだ。

 これは容易なことではない。社会的見識も当然のことながら、自意識が極度に発達していなければ、とてもこなせる職業ではない。他人を押しのけるだけの厚顔無恥さも必要条件だ。いくらきれいごとを言っても、選挙で勝たない限り、「ただの人」である。

 仕事を終え、いつもは新宿の地下通路を歩くのに、今日に限って地上を歩いていたら、西口広場で創生「日本」が街頭演説会を開こうとしていた。創生「日本」の会長は安倍晋三元首相。自民党の中でも日本の歴史・伝統を重視することを基本に置いた新保守主義に立脚しつつ行動する超党派議員グループを名乗っていた。これも何かの縁と思って足を止め、30分間耳を傾けた。

 1年間足らずとはいえ、民主党の目指す政策の方向性も大体見えてきた。米軍基地問題を中心とした外交・安全保障体制、日教組主体の教育体制、消費税、子ども手当てなどは同党が何を目指しているか読み取ることができる。問題はそれを自らがどう評価するかだ。

 ポスト鳩山政権樹立に向けた戦いが開幕した。国民はひとまず横に置いて、民主党内の戦いである。修羅場になればなるほど、人間の本性は姿を現すものである。民主党の本当の姿をじっくり確かめるまたとない好機だ。いつまでも日本が漂流していていいはずがない。それができるのは国民1人1人でしかない。民度を上げることしかない。

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