野田首相、TPP交渉参加表明

野田首相会見(「NHKニュースウオッチ9」)

野田佳彦首相は11日午後8時から首相官邸で記者会見し、環太平洋連携協定(TPP)への対応について、「交渉参加に向けて関係国との協議に入ることにした」と交渉に参加する方針を表明した。

首相は会見で、TTP交渉参加方針決定の理由について、「現在の豊かさを次世代に引き継ぎ、活力ある社会を発展させていくためには、アジア太平洋地域の成長力を取り入れていかなければならない」と強調。「情報収集に努め、十分な国民的議論を経た上でTPPについての結論を得たい」と説明した。

交渉参加方針の表明は10日から1日延期されたが、民主党の経済連携プロジェクトチームが「慎重な判断」を求める提言をまとめたことに配慮したとの見方が支配的だ。「参加する」のではなく、「交渉参加に向けて協議に入る」との回りくどい表現も同様の趣旨だ。山田正彦前農水相が「参加表明ではなく、事前協議にとどまった」とほっとしたとコメントしたのが印象的だ。

野田首相は表明時期(たった1日であっても)や表現方法で配慮したものの、それは反対派に対する単なる配慮であって、首相が「交渉参加」に後ろ向きになったと考える向きはない。真意は「参加」にあるといわれている。しかし、党内の抵抗が強く、配慮せざるを得なかったという。

反対勢力の中心は農協を主体とした農業団体と医療団体。TTPに参加すれば、「国内農業が崩壊する」「国民皆保険が維持できない」というのが理由だ。ただ反対勢力の中も、筋金入りの「絶対反対派」から追加対策獲得をにらんだ「条件闘争派」、選挙を強く意識した「選挙事情派」など割れているといわれる。野田首相は第4次補正予算の編成方針を表明しており、それをにらんだ駆け引きも絡んでいるようだ。

どうも野田首相が気にしているのはTPP問題よりも、その後に控えている消費税引き上げ問題のようだ。政府は2010年代半ばまでに10%に引き上げるための準備法案を例年の通常国会に提出する方針だ。実施時期や引き上げ幅について年内に意見集約を目指しているが、引き上げ自体に強硬に反対してきた勢力を押さえて引き上げを決めたものの、意見集約のプロセスで再び反対論が噴出するのは確実な情勢だからだ。

そうだとすれば、この日のTTP参加表明はどうも、本丸の消費税引き上げ法案化に向けた前さばき的位置づけだったと考えるしかない。TPPは農業ばかりがクローズアップされて、われわれ個人の生活にどのような影響があるのか良く分からない。情報自体が乏しい。「協議に入るかどうか」でなぜこんな大騒ぎしなければならないのか分からない。

情報が少なくて分からないから、協議に入って情報を取るのは当然のことだ。TPPに限ったことではないが、政治の世界で議論されているのは何か変な感じである。情報が決定的に少なく、判断材料が乏しい中で、「ああでもない、こうでもない」と不毛な議論が繰り返されている。政治家が気にしているのは選挙のことばかり。国民のことなど頭から欠落しているのではないか、と思えてならない。

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2011年11月11日