「こくば」かき
春分の日。こちらにきてやっと太陽が顔をのぞかせた。 家の中にいると、石油ストーブをつけ、空調の暖房を入れても、部屋の温度こそ多少は上がるものの、どういうわけか腰から下は少しも暖かくならず、底冷えする感じがなかなか解消しない。
むしろ、外のほうが暖かった。昼間は庭仕事に精出した。特に松の手入れは難しい。そんなに大きくないのに、手が一番かかる。昨年10月も枯れた枝を取り除いたはずなのに、まだまだ残っていて、丸で枯れ木みたいだ。松枯れ病にやられているかもしれない。化学肥料の硫安を周囲に撒いて対症療法を施したが、効き目があったかどうか。
松の木の周辺に枯れ葉が敷き詰めたように落ちている。それを熊手で集める。丹波地方では松の枯れ落葉のことを「こくば」(広辞苑では漢字で扱葉と書く)と呼んでいた。昔はかまどでお風呂を沸かしたり、煮炊きしていたので焚き付けのために近くの山にこくばを取りによく行ったことを覚えている。子どもの仕事だった。
今ではそんなことをする人は誰もいないが、このこくばは実は薪ストーブの焚き付けに最適なのだ。松やにを含んでいるためか、ぱちぱちとよく燃えるのだ。松やには煤(スス=タール)を発生する問題もなくはないが、家自体が煤だらけみたいなものだ。