『一つの国際協力物語 タイのモンクット王工科大学』発刊記念会

東海大学校友会館「富士の間」

 

ODA専門誌「国際開発ジャーナル」主幹の荒木光弥氏が1年がかりで書き上げた国際協力のヒューマン・ドキュメント『一つの国際協力物語 タイのモンクット王工科大学』の発刊記念会が26日夜、東海大学校友会館(東京霞が関ビル35階)で開かれた。

私は2005年9月19日にも荒木氏の同様の趣旨の記念会に出席した。そのときも69歳という実年齢と見た目の若々しさとのギャップに驚いたが、あれから6年半経って、氏も今や75歳。しかし、滑舌の良さ、仕事に対するにじみ出る意欲・熱意・意気込みは健在で、またしても同氏の「年齢不詳ぶり」にびっくりした。

本を書くのは楽なことではない。いくら日々書き続けていても、そう簡単には書けない。書くに値することを、歴史に残す意味のあることを、後世の評価に耐えられる内容を発表することは大変なことだ。いくら書くのが商売のジャーナリストでも、楽して書けるものは何もない。

私も掛け出し当時、先輩記者から「原稿は苦しみながら書くものだ」と教えられた。今も原稿を書くのは苦しい。毎日書いていないとなおさらだ。しかし、書くことが仕事だから、ウンウンうなりながらでも、書き続けるしかない。「書くことは苦しい」と居直れば、不思議なもので書き続けられるのだ。そうやって書き続けているうちに、書くに値するものがひょこっと輪郭を現してくる。そうなると、いつの間にか書くことが苦しくなくなってくる。マラソンでいう「ランナーズハイ」だ。

モンクット王工科大学ラカバン校(KMITL)は1960年に電気通信訓練センターとしてスタート。75年に5年制大学に昇格した。タイの工業化の進展に伴って必要となる工科系人材の主要な供給源としての役割を担った。今日のタイの経済発展を人材面で支えてきた。当初から校舎・機材の供与からカリキュラムの作成に至るまで全面的に協力してきたのが 国際協力機構(JICA)だ。KMITLは2010年8月24日、50周年を迎えた。

 

謝辞を述べる荒木氏

荒木氏は本を出した理由について、「国際協力プロジェクトの報告書は1行で済まされてしまう。40年かかったものも、それほどかからなかったものも1行。これでは感動も何もない。誰が何をやったかを明らかにしなければきちんと伝わっていかない。KMITLプロジェクトには伝えるべき人間ドラマがある」と指摘。「これからの協力は人を作って、国を支える。これが王道だ」と強調した。

荒木氏との付き合いが50年にもなるという渡辺利夫拓殖大学総長・学長は「荒木さんは風貌だけでなく、書くスタイルも全く変わっていない。とにかく熱い」と同氏のジャーナリストとしての一貫性に敬意を表した。同感だ。

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