『常に挑戦を!』

 

書名:『常に挑戦を!』
著者:安達一彦(インテリジェント ウェイブ会長)
出版社:財界研究所(2011年6月26日第1版第1刷発行)

■「日本は経済で一流になったのに、世界の指導者になれなかったのは、やはり哲学・思想がなかったからだと思います。哲学・思想がなければ世界をリードなどできません。
これは中国も同じです。中国には現在、まともな経済学者さえいません。世界のリーダーになるには、新しいパラダイムを作っていかなければいけません。今でも本当に新しいもの、新しいアイデアが出てくるのは主に米国からです。ITの分野では特にそうです。IT関係ではいま完全に、米国からしか新しいものが出てきません。ほかに若干、出てくる可能性があるとしたなら、イスラエルかロシアぐらいです。日本からはほとんど何も、IT分野では新しいものは出てきていません。それはやはり、哲学・思想がないから、体系的なものが作れないからなのではないかと思います。日本人は小物をつくるのはうまいです。だから携帯音楽プレーヤーのようなモノを作ってヒットさせることができます。しかし、そこから先に行けない。ハイブリッド車のような自動車単体をつくることはできますが、その先の、今までとは根本的に違うような車をつくることは恐らく、このままではできないのではないかと思います。」(P92~93)

★日本人の「無宗教・無思想・無哲学」は否定できないかもしれない。キリスト教徒やイスラム教徒のように、「仏教徒」であると明言できない自分がいる。信仰心らしきものはあるものの、信徒と言える自身はない。宗教心がぼんやりしている。どう説明すればよいのか?『無思想の発見』(養老孟司、ちくま新書、2005年12月)を読めばヒントがあるかも。日本には本当に哲学・思想がなかったのか?西田幾太郎、鈴木大拙など偉大といわれる思想家もいなくはないが、戦後はどうだろう?こういうことをじっく考えたことがないことも確かだ。考えなければならない局面になかった。そんなことで時間が何十年も過ぎてゆき、それが「リーダー不在」「哲学・思想不在」「世界を劇的に変えるアイデア不在」を招いているのか?自分で新しいパラダイムを作れない以上、世界を引っ張っていくのは無理で、所詮、パラダイムシフトにふうふう言いながら、着いていくのが精一杯なのか?援助の新しいパラダイムをつくるのはとても無理か。

■「景気を良くするためにはやはり、米国の共和党的な発想が日本にも必要だと思います。やはり、自分は自分で自立してやっていく、という、自主独立の精神を持ち続けないと、国に頼ろうとしてしまうようになります。日本は大企業まで国頼ろうとするところが問題です。それではますます経済はおかしくなります。米国には共和党的な発想をする人が、まだ国民の半分はいます。これは米国経済の強さになっています。欧州がいま、だんだんと経済的におかしくなっているのは、社会保障を厚くしすぎたためにまず、人がダメになっていきているからではないかと思います。
スウェーデンのような一部の国で高福祉のモデルが成功しているのは、国が小さいからできることだと思います。人口はわずか3、400万人。これくらいの規模だと、国というよりも1つの巨大企業のような感じで国の運営が可能です。・・・それと、北欧各国はもともと、バイキングの子孫の国々です。遺伝的にもの凄くやる気、ガッツがあります。北欧の国々は、冬は厳冬で生活環境も厳しいし、もともと狩猟民族で肉食ですから、遺伝子に積極的に行動することが組み込まれています。それに比べて、日本人は草食的な生活ですから、半ば強制的に鼓舞して活性化することを考えていかないと、だんだん衰退する方向に行ってしまうでしょう」(P103~105)

★国づくりの基本を自助努力に置くのが共和党の精神。「小さな政府」だ。民主党は政府支援を軸とした「大きな政府」が政策の基本がある。日本で言えば、自民党が共和党、民主党は米民主党だ。自民党は米共和党は相性が良かったが、日米民主党同士の波長が全く合わないのはなぜか?日本には米民主党的な発想が多過ぎるのではないか?これでは衰退するのは当然だ。

■「テクノロジーや技術の世界のパラダイムは数学で変わっていきます。それが世の中を変えます。蒸気機関が出てきたり、通信技術が発達したり、パソコンが出てきて世の中が変わっていく。これは基本的には数学が新しい問題を解いたことで出てきた世界です。しかし、人間世界のところまでは、数学ではわかりません。これは哲学の世界だからです。
日本には歴史的にも、あまり世の中を変えた哲学者がいませんでした。それはみんな、哲学者ではなく単なる思想家だったからではないかと思います。戦後に出た吉本隆名明は哲学者に近い思想家でしたが、あの人がようやく日本では、最も社会に影響を与えた人ではなかったかと思います。だから日本の哲学はとても貧困なのだと思います。だから残念なことに日本は、約20年前に経済で世界1位に」なれたのに、世界のリーダーに歯なれなかったのだと思います。
それは、今の中国も同じです。それどころか、中国は日本以上にひどいと思います。中国には複数政党制によるちゃんとした近代民主主義の経験すらないのですから、決して世界のリーダーにはなれないでしょう。だから、日本はいまこそ数学教育と哲学教育をやり直さないといけないと思います」(P140~141)

★世界のパラダイムを変えるには技術の世界では数学、人間世界は哲学が重要だ。こんな基本的なことをしっかり認識していなかったのは問題だ。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.