「今年の中国経済、8.5%成長見通し」

富士通総研の柯隆主席研究員

 

テーマ:中国経済見通し
会見者:柯隆富士通総研経済研究所主席研究員
日時:2013年1月9日@日本記者クラブ

●経済診断をする場合、「債務」と「貯蓄」の両面を考える必要がある。中国の貯蓄率は国が50%(家計32%)。高い貯蓄率を考えれば、中国経済は今後も成長を続けれる。2013年は8%台半ばの成長率を達成できる。12年は7.8%、11年9.2%、10年10.4%だった。

●中国経済の先行きについては人口ボーナスが崩れるので成長が伸び悩むとの悲観論がある一方、内需刺激による成長余地があるので今後は世界の工場から世界の市場になるとの楽観論が入り乱れているものの、財政余力、高貯蓄率などが健全だからだ。

●毛沢東はラストエンペラー、鄧小平は半身が神で半身は人だが、習近平は全身が人間。毛沢東を名指しで批判すれば死刑だったが、鄧小平時代は牢屋に入れられる程度、今度の習近平の場合は特にお咎めなし。習近平はカリスマ性もなく、政権を維持するためには国民の支持を得るしかない。国民に夢を語るしかない。中国には過去10年間夢がなかった(日本は20年間もなかったが)。

●毛沢東や鄧小平、江沢民などはとにかくなまりがひどかった。それに比べて習近平は標準語をしゃべっている。

●チャイナリスクはカントリーリスク(政治リスク)、オペレーションリスク、セキュリティーリスクの3つ。政治リスクは格付け機関がウオッチするメカニズムができている。納期順守、部品供給、人件費上昇、スト発生などのオペレーションリスクは経営現場が考えなければならない。尖閣問題に代表される安全保障リスクは情報収集・分析の強化と情報共有の徹底を図るしかない。

●尖閣紛争時の反日デモの際に、日系商店が全く無防備に営業を続け、何ら手を打っていなかったのは信じられないことだ。大使館や企業関係者は一体何をしていたのか。あれではデモ隊に「襲ってください」と呼び込んでいるようなものだ。

●1000万人雇用(直接600万人、間接400万人)、巨額納税、技術移転(家電・自動車など)の貢献度は極めて高い。中国は日本からの対中貢献3点セットをこれからも必要としている。外務省や大使は声を大にしてこれを訴えるべきだった。共通利益さえあれば、関係はそんなに悪化しない。

●胡錦濤政権時代の10年間、改革は先送りされた。日本では「失われた20年間」と呼ぶが、中国では「失われた10年間」と言っている。

●日本の失われた20年間に何が失われたか。首相が替わるたびに国力が失われた。企業レベルで言えば、ブランド力が失われた。大企業の経営はバランスシート経営。コスト削減の結果、デフレが深刻化した。コストは削減するものではなく、最適化するものだ。コスト削減はモチベーションを下げるだけだ。これが20年間続いた。元気になれないのは当然だ。

●日本企業(製造業)は今も「性能」を売っている。しかし、類似性能を売る国が続出し、性能を売る時代は終わった。今はブランドやカルチャーを売る時代だ。「技術で勝って、ビジネスで負けている」。日本企業は設計を大切にしているが、そこからは性能しか出てこない。今や必要なのはデザインだ。製造現場にデザイナーを入れなければならない。それが日本の物作りの現場で欠けている。

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