「日本は沈没ではなく、いかに浮上するかを考えるべき」

会見するディッキー前FT東京支局長

会見するディッキー前FT東京支局長

 

テーマ:英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙前東京支局長に聞く
会見者:ミュール・ディッキー現同紙スコットランド特派員
2013年3月26日@日本記者クラブ

●日本に関心を持ったきっかけは小松左京氏の『日本沈没』を読んだこと。今回の3.11で日本社会が見せた自己規律には感動した。それは日本の社会が堅固であることの最善を示したが、反対に最悪も露呈することになった。日本のメディアの主流が安全神話に寄り掛かり、きちんと検証しなかったことや被災地住民が震災復興に対して失望感を抱いていることだ。

●日本のメディは国に沈没するとか破綻するとか危機を煽ってばかり。国のムードを暗くするばかりでは若者が将来に対して希望を持てというほうが無理だ。

●世界では日本を見過ごす傾向が強まっている。それは日本経済が衰退しているとの見方が高まっているからだ。日本はそうした見方を変えていく努力を行っているが、度重なる首相交代がそうした努力の足を引っ張っている。世界が日本に対する関心を失っても仕方ない。

●日本が国際的な関心を引き付けられないもう1つの理由は中国の台頭だ。中国の台頭で日本が相対的に衰退するのは必然だ。中国は脆弱性を抱えているほか、過剰評価されている。私としては日本の重要性が薄まったのではなく、むしろ高まっていると考えている。日本側には中国に学ぶことはほとんどないが、中国には日本に学ぶことが多々ある。直近では大気汚染対策がそうだ。

●尖閣諸島問題は石原慎太郎東京都知事(当時)の火遊びで問題が大きくなった。野田政権は水面下の手法で対応したことはリーダーシップが弱いことのシグナル。地方都市が国家戦略に介入した。

●アベノミクスに対しては世界が注目している。世界にとって参考になる実験を立ち上げた。日本が将来にわたって成長するかどうかは女性の才能を使いこなすかどうか。生産・経済分野に投入できるかどうか。日本には経済や社会的余力が残っている。危機を乗り切れる余力はある。

●日本を去るに当たって最後に助言できることがあるとするならば、日本はいかに沈没するかの話ではなく、いかに浮上していくかの話をするべきだ。

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