『刺客 用心棒日月抄』

新潮社版(昭和59年7月15日7刷)

新潮社版(昭和59年7月15日7刷)

 

たまたま近所のブックオフの「105円均一棚」を眺めていたら、懐かしい書名が目に飛び込んできた。藤沢周平の用心棒シリーズ。著者あとがきによると、「忠臣蔵を横から眺めるという体裁をとった最初の1冊、『用心棒日月抄』だけで終わるはずだった小説」だったが、「それが『孤剣』『刺客』と書き続けることになったのは、ひとえに編集者のそそのかしによるもの」だという。

著者は「そのそそのかしに乗ったのは、作者の側にも小説の中の登場人物とのつき合いをたのしむ気分が生まれていたということだろう」と続けている。さらに「登場人物とのつき合いが深まると、今度は主人公をこれ以上浪人させるにしのびない、などといういくぶん滑稽な矛盾も出て来て、このシリーズ小説はこのへんで終わるわけである」としている。

ところが、あとがきで著者が「ただ、小説は終わっても作中人物に対する親しみは残っていて、ある日ふと、この小説には後日談があるかも知れない、などという妄想がうかんで来たりする」とも書き、「多分書かれはしないだろうその小説のことをぼんやり考えたりする」。

そして、終わるはずだったシリーズに妄想の1冊『凶刃』が加わる。現実はそういった展開になる。3年前にこの季節にも読んでいる。もう何度も読んでいるが、こうして何度も読み返す本があるというのは嬉しいものである。

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