ヒッグス粒子発見

「発見は国際協力研究の成果」

「発見は国際協力研究の成果」

 

物質は何からできている?

物質は何からできている?

 

「力」にも種類がある

「力」にも種類がある

 

「ヒッグス粒子発見」に関する一般向けの講演会が開かれることを新聞の催し物欄で見つけた。土日のイベントには出にくくなっているが、台風一過の秋晴れだったので思い切って出掛けた。

会場が母校だったことも後押しした。早稲田大学国際会議場井深大記念ホール(東京都新宿区早稲田)。一般講演会と銘打たれていたが、案の上、内容はほとんど理解できなかった。理解できたのは物理学の世界でも知られているのはまだごくわずかでしかないことだった。

自分が今生きているこの瞬間さえ何が何だか全く分からないのに、「宇宙」などと言われてもさっぱり理解不能だ。しかし、そんな実に深遠な大問題にきちんと取り組んでいる人々がいることに最大限の敬意を表しておきたい。

宇宙の起源は138億年前。ビッグバンと呼ばれる大爆発で生まれたといわれる。知識としては知っているが、想像もつかない。ヒッグス粒子はビッグバン直後に生まれ、宇宙空間を埋め尽くしたという。

ヒッグス粒子は物質を構成する最小単位である素粒子の1つ。「1970年代に完成した素粒子物理学によると、原子核をつくるクォークや電子など全部で17種類あるとされたが、ヒッグス粒子だけが長く未発見だった。」(SankeiBiz『「ヒッグス粒子」提唱で宇宙の謎解明に貢献、ノーベル物理学賞』2013.10.26)

ヒッグス粒子の存在を予言する理論が提唱されたのは1964年。英エディンバラ大学のピーター・ヒッギス教授とベルギー・ブリュッセル自由大学のフランソワ・アングレール教授だった。ノーベル物理学賞も2人に授与された。

この日「ヒッグス粒子の発見」について講演した寄田浩平早大理工学研究所・先進理工学部物理学科准教授によれば、1964年には同じ内容の論文が3つも提出されたという。

雑誌アスキーはこの辺の事情をもっと面白おかしく紹介している。

●第1論文
フランソワ・アングレール(François Englert)
ロバート・ブラウト(Robert Brout)

●第2論文
ピーター・ヒッグス(Peter Higgs)

●第3論文
トム・W・B・キッブル(Tom W. B. Kibble)
ゲラルド・グラルニク(Gerald Guralnik)
カール・リチャード・ハーゲン(Carl Richard Hagen)

ノーベル物理学賞は①1授賞3人まで②対象は個人③授賞時に生存していること-が内規で決まっている。ブラウト氏は11年に死去し、権利落ちだった。

論文執筆ではアングレール氏が先で、ヒッグス氏は2番手だった。両氏とも素粒子に質量を与える場について論文に書いたが、そこから生まれるであろう粒子については何も言及してなかった。

両氏の論文を査読をした南部陽一郎博士(2008年ノーベル物理学賞受賞)はヒッグス氏の論文に付け足しを助言し、それが同粒子の存在を予言する歴史的内容となり、「ヒッグス粒子」の名前が付いた。下世話な関心だが、そういうものらしい。

理論的発見は1964年。その後、ヒッグス粒子の存在を確かめる実験が世界各地で行われた。そして12年7月、欧州合同原子核研究所(CERN、スイス・ジュネーブ)の大型加速器LHCが「99.9999%以上の確率で発見した」と発表。今年7月「ほぼ発見」と断定した。

CERNの実験チームには世界から3000人近い研究者が参加し、日本からも100人以上が加わっている。ヒッグス粒子の発見に日本が多大な貢献をしたといわれるゆえんだ。

しかし、どうもこれで終わりではなく、宇宙の謎解明の入口に立ったばかりらしい。素粒子物理学の基本法則「標準理論」で説明できた物質は宇宙全体の4.9%だけで、残りの暗黒物質やダークエネルギーは正体不明だ。

「21世紀の今、物理学者たちはヒッグス機構(ヒッグス・メカニズム)の背後には、大胆にも相対性理論を超えた新しい時空の原理、超対称性があるのではないかという仮説を立てている。我々の住んでいる宇宙のいたるところは超空間という隠された空間につながっていて、LHC実験ではその超空間への壁を突き破り、超粒子が飛び出すところを捕まえようとしているのです」(北野龍一郎高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所教授)

寄田准教授によれば、いずれの「大発見」を生んだのも「発想の転換」だったという。発想を転換するのは簡単なことではないし、転換したから必ず大発見につながるとはもちろん言えない。

しかし、おしなべて発想転換が「大発見」を生んだのである以上、挑戦してみるのも悪くない。「大発見」は望むまい。「小発見」で十分だ。そう思っただけでも、ノーベル賞受賞学者になった気分だ。

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