『御隠居忍法』

これがなかなか止まらない

これがなかなか止まらない

 

署名:『御隠居忍法』(シリーズ第1作)
著者:高橋義夫
出版社:実業之日本社(1995年1月25日第1刷発行、初出『週刊小説』1992年9月25日号~94年8月5日号)

 

睡眠導入剤として読み始め、トイレに行って読み続けているのが『御隠居忍法』シリーズ。忍者物が好きで、著者の作品も何冊か読んだ覚えがある。たまたまブックオフで見つけた『しのぶ恋』を先に読んではまってしまった。

御隠居忍法シリーズ10作目。あとがきで、「第1作を書き出したのは、作者が45歳のときだったから、元御庭番が隠居して北国の小藩の領内に隠棲するという設定は、自身の実年齢にも近く、いわばちょっとした洒落のつもりだった。まさかそれから20年以上、書きつづけて10作にもなろうとは、作者本人が思ってもいなかった」。

45歳で隠居というのは現代では考えられないが、人生50年時代の江戸時代はそれが普通だった。隠居というのはいい身分で、現役世代からみれば、確かにいい気なものかもしれない。しかし、高橋氏によれば、「江戸文化を支え、新事業をおこしたのは隠居だった」とか。それだけ余裕があったということか。

うらやましさもあって、「隠居」という言葉に惹かれたのかもしれない。しかし、物語の御隠居、鹿間狸斉(しかまりさい)は忙しい。元御庭番の本能がうづくのだろう。数々の事件に巻き込まれ、ときには自分で進んで事件の渦中に入り込んでいく。謹厳居士ではなく、その歳で女中に手を付け、子どもを産ませ、既に嫁いだ娘から愛想を尽かされたり、どうにも生々しい。それが物語の魅力にもなっている。

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