「リニアは東海道新幹線以上に安全」

スピーチする葛西敬之氏

スピーチする葛西敬之氏

 

タイトル:東海道新幹線とリニア
ゲスト:JR東海名誉会長・葛西敬之氏(かさい・よしゆき)
2014年12月12日@日本記者クラブ

 

葛西敬之氏は1940年新潟県生まれ、東京都育ち。都立西高から東大法学部卒。10月に74歳になったばかりだが、今年4月に代表取締役名誉会長を新設して就任。1995年から社長、2004年からは会長を務めており、JR東海の経営権を握って20年。「院政というより、もはや独裁政権」と指摘されても不思議ではない。

会見でも、名誉会長が代表権を持つことについて聞かれ、「私以外ができないことしかやらないことにしている。つまり、海外の仕事というのは人が代われば、代わったなりにやっていけるという話ではない。特にアメリカのプロジェクトは継続的にやっていかないと話が進まない。海外については会社を代表する立場を維持する」と胸を張った。

JR東海は米北東回廊のワシントン-ニューヨーク間へのリニア新幹線技術売り込みに取り組んでいる最中。既に安倍晋三首相を動かしてオバマ大統領に提案し、商談を進めている。第一弾はワシントン-ボルティモア間だ。

葛西氏によると、「北東回廊は日本の東海道回廊(東京-大阪)と同様、高度に都市化され、道路は渋滞。空港のスロット(時間枠)は完全に込んでしまって飛行機がこれ以上飛ぶ余地はない。もう1本空港をつくり、もう1本高速道路をつくるのもお金がかかりすぎる」

「北東回廊は詰まった冠状動脈みたいなものだ。そうした都市化した地域のバイパスとして高速鉄道を作っていく。地域の基本インフレのバイパス機能を提供したい。米国はそれを必要としており、我々はその技術を持っている」と葛西氏は語る。

JR東海は日本国内で12月17日にリニア中央新幹線に着工。ドル箱の東海道新幹線の収益のかなりの部分を投入して自社独自で巨額投資(東京-名古屋間5兆円超)を行うが、東海地震が起きれば、JR東海も倒壊するのは目に見えている。中央新幹線も日本アルプスの地下にトンネルを掘る大工事だ。

東海道新幹線の安全性は、専用の広軌軌道を高速列車だけが走り、ATC(自動列車制御装置)で集中制御することで列車の衝突を回避するシステムで担保されている。しかし、日本には至るところに断層があり、東海道新幹線もその断層を横切る形で走っているのは事実。他のあらゆる鉄道網はそういう形になっている。

葛西氏は「それを言えば、鉄道そのものが機能しなくなる」という。リスクは星の数ほどある。技術の発展はリスクへの挑戦の歴史だ。

リニア中央新幹線の安全性については、「東海道新幹線が安全であると言うのならば、それ以上にリニアは安全だ」と葛西氏は言う。

「山の中は海岸線と違って85%が大深度地下か山岳トンネルで通路を構成する。地下鉄とか地面の中にある構造物は地面と一緒に動く。従って破壊されることは少ない。地上にある場合は、地上の構造物と地面の動きが違った動きになるので構造物が地殻の変動によって破壊されやすい。リニアの場合は脱線の危険もない。今のあらゆる交通機関よりも安全だと言える」

リスク、欠陥、課題を指摘すれば限りない。「悲観は気分に属し、楽観は意思に属する」(仏哲学者アラン)ならば、葛西氏は間違いなく楽観主義者だ。”独裁者”の弊害は多いが、大いなる楽観こそが壮大な事業を成し遂げるのもまた真理かもしれない。

安倍晋三首相が日本経済を本当に再生できるとすれば、多少の犠牲を払っても、独裁者の道を歩むしかないのかもしれない。ジャーナリズムはそれをチェックする機能を果たさなければならないが、足を引っ張るだけでは国力を衰退させる。舵取りが何とも難しい時代だ。

 

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