EU、独禁法違反問題でガスプロムと和解へ

 

講演する本村氏

講演する本村氏

 

欧州連合(EU)は11月、2011年以来行っていたロシア国営天然ガス会社ガスプロムのEU競争法違反調査を打ち切り、ガスプロムと和解する方針を決めた。巨額の制裁金や排除措置ではなく、法的拘束力のある問題是正の確約によって、5年に及ぶ調査の幕引きを図る。

10月27日、日経新聞朝刊で方針が表明された。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査部の本村真澄氏もこれを追認した。

これまで容量の50%しか使用が認められていなかったOPALパイプラインについては80%が使用できることになり、これによりNord Stream経由の対欧州ガス供給量の増加が見込まれる。

これにはポーランド、バルト諸国がロシア産ガスの偏重を理由に反発しているものの、これにはエネルギー安全保障論ではなく、自国通過ガスが減少して通過料が下がるという懸念が本音だ。

停滞していたNord Stream2は動き出すと思われ、バルト海軽油のガス供給は倍増する。

ガスプロムから欧州へのガス供給は今後、複数ルートで拡大すると見込まれる。昨年のシリアでのロシア機撃墜事件以来対立していたトルコはロシアに謝罪し関係修復したほか、同時に停止していたTurk Stream計画も復活し、政府間合意が成立。Turk Streamによる対トルコガス供給が増加する。将来的にギリシャ経由での対欧州ガス供給の増加もあり得る。

トルコの翻意は対ロ強硬路線を率いた6月24日の英国のEU離脱決定の3日後。英国なしのEUの将来を見越した措置だ。対ロ強硬路線を引田英国の離脱で、EU内ではロシアに強硬であったポーランドの発言力が低下する。これにより、ロシアの対欧州天然ガス政策がより円滑となり、今後供給量の拡大が見込まれる。

欧州のガス輸入は2025年までに36%増加する見通しだ。トランプ米新政権は対ロ強硬路線を否定しており、Brexit効果と相まって、今後ロシア産エネルギ-の供給力の増加が予想される。

 

 

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