自然エネルギー100%を目指す「RE100」の取り組み

 

ロッキーマウンテン研究所ビジネス再生可能エネルギーセンターのエルヴェ・トゥアティ氏

 

「Re100」を推進する英クライメート・グループのダミアン・ライアン最高責任者代理

 

世界のトップ企業が自社で使う電力を100%自然エネルギーに転換する取り組みが広がっている。この動きを支援・促進している米ロッキーマウンテン研究所のビジネス再生可能エネルギーセンターのエルヴィ・トゥアティ・マネージングダイレクターと英国際環境NGOクライメート・グループのダミアン・ライアン最高経営責任者(CEO)代理が記者会見し、取り組みについて解説した。

主催は公益財団法人の自然エネルギー財団(会長・孫正義ソフトバンクグループ社長)。

ライアン最高責任者代理は「Re100」(Renewable energy 100)について、自然エネルギー100%を公約に掲げる世界的に最も影響力のある企業で構成された国際イニシアチブで、クライメート・グループがCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とともに運営していると述べた。拠点はどちらも英国。

クライメート・グループはロンドンを拠点に、ニューヨーク、ニューデリー、北京にオフイスを持つ。小さな組織ではあるものの、それなりの影響力があると希望している。組織ができてから14年になる。企業や地方政府とネットワークを持っている。触媒機能を持ち、ハイインパクトで経済コミュニティーを変化させることを目指している。クリーンエネルギーの設計を促し、パリ協定の2度目標達成に貢献しようとしている。Re100イニシアチブは2014年にスタート。

15年度の環境省報告書によると、自然エネルギーの拡大では企業が非常に重要な役割を担っている。

・日本の自然エネルギー調達は116.1TWhで、主要先進7カ国中で最低の利用水準。
・30年までには太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、海洋エネルギーによりこれが3倍にまで上昇する可能性がある。

メンバー88社が107TWh(テラワット=ギガワットの1000倍)を超える自然エネルギーの需要を創生している。これは現在の日本の総消費量に匹敵する量だから大きな量だ。内訳は北米32社、欧州51社、アジア5社(インド3社、中国2社)。考え方はシンプルだが、強力なイニシアティブだ。アップルやイケアなど。GM、BMWグループ、ゴールドマン・サックス。中小企業だけのイニシアティブだけではなく、主導しているのは世界最大規模、影響力のある巨大企業が参加している。この数をできる限り増やしていきたい。

参加企業は世界トップ企業だが、これは自然エネルギーに対する企業コミュニティーから世界の支持が高まっていることを示している。これはグリーンビジネスではないのがポイントだ。トップ企業だ。

世界企業がRE100に加盟するメリットは4点。クリーンでグリーンであること。

・長期的な支出減/光熱費の安定化
・ビジネスリスクの低減
・排出量削減目標の達成
・社会的評価の向上

2015年のデータに基づくRe100年次報告書2017年版(1月発表)によると、

・15年までに11のメンバーが100%を達成
・大半が24年までに100%達成を目指している
・北米は、Re100メンバーの中で最も高い自然エネルギー需要を示している
・グリーン電力証書の購入が最も一般的な選択肢で、これにグリーン電力メニューの利用が続く
・15年は電気通信部門が97%と最も高かった
・ゼネラル・モーターズ(GM)は自然エネルギー利用により年間500万米ドルを節約した。今後、より拡大していく
・タタ・モーターズは全社の電力の約9%を自然エネルギーから取得し、CO2換算で3万5099トン分の温室効果ガス排出抑止につながっている
・アップルは自社排出量の77%がサプライチェーンに由来するという試算に基づき、20年までに全世界の4GW以上の新エネルギーを導入するため、サプライヤーとともに取り組みを行っている。ただの1社がこれだけのパワーを導入している。

加盟するためには3つの技術的基準を満たさなければならない。

・世界全社の電力の100%を再生可能資源由来とする公約
・自然エネルギーの消費および発電について、年次報告を行う公約
・第3者認証が必要とされる

企業は自家発電(イケア)電力購入などたくさんのオプションを持っている。クライメート・グループとしてはできるだけ多くの企業に加盟を勧めている。市場の需要を変えていくことで市場が急速に伸びるし、転換点に到達し、もはやこうしたイニシアチブが無用になることを望んでいる。

主要なターゲットとしては中国、インドを想定。アジアを増やしたい。日本も重視していることを認識している。ビジネスが需要家も取り入れながら増やしていくか。

米ロッキーマウンテン研究所ビジネス再生可能エネルギーセンターのエルヴィ・トゥアティ・センター長は以下のように語った。電力をグリーン化したいと考えた場合、企業が行う場合、最初のオプションはオンサイト(系統売電)で始めるということだ。グリッドなくして生きていけない。PVのモジュールを屋上に設置する。そのあと何をするか。第2は太陽光で発電を行うことだが、ゼロではできない。グリーンエネルギーをオフサイトから買ってくるしかない。100%にしたい場合、どうしても外部から調達する必要が出てくる。

 

 

        電力購入契約(PPA)の主な特徴

 

アメリカ企業が何をするのか。風力、太陽光などをどのように調達しているのか。主に使われている仕組みはこれだ。

購入企業は風力・太陽光デベロッパーと契約を締結する。電力を欲しい会社がデベロッパーと相対の契約で市場価格で買うと固定料金を支払う。会社側が手にするのは自然エネルギークレジット(REC)と呼ばれる証書。

企業は再エネを使っていると言いたい。自分たちもこういう努力をしたので新たな風力、太陽光発電所ができたと主張したい(追加性=additionality)。

これを日本で行う場合には流動性の高いスポット市場が必要だ。経産省を説得する必要がある。ディベロッパーがプレミアムを受け取り仕組みが必要だ。電気代を上回るプレミアム。日本に是非検討してもらいたい。

ビジネス再生可能エネルギーセンター。これは複数の会社が集まっているコミュニティー。アメリカで自然エネルギーに注力している企業の集まりだ。どういう風に自然エネルギーを調達するか考えている企業で、現在193社がメンバー。バイヤーにはホンダ、ブリチ”ストン、スプリント(ソフトバンク)が入っている。ディベロッパーには米州住友商事、北米住友商事も入っている。

リーダーの存在はどういうところか。あらゆるセクターが参加している。トップ6社は2006年がエクソンモービル、GE、マイクロソフト、シティグループ、BP、ロイヤル・ダッチ・シェルだったが、16年はアップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、エクソンモービル、フェイスブックとハイテクが5社を占めた。

こういう会社は投資家や顧客、従業員に影響力を及ぼしている。だから大事なのだ。サプライチェーンにも影響力を及ぼしている。つまり取引先にも影響力を及ぼしている。この点が大事だ。

フォーチュン100の中で66社が「サステナビリティ」を目標に設定している。101社から250社までは54%、251~500社は30%が何らかの設定を行っている。フォーチュン100ならばPPAを13%が調印済みだ。大きな企業が主導しているものの、これだけ多くの企業にまで影響が広がっている。

トップの会社がサプライヤーに圧力を掛けるので他の会社もどんどん追随していく。

新政権の影響はどうか。選挙の2日後にデトロイトで会議を行った。電話で答えてもらった。「トランプ政権の誕生で自然エネルギー調達の意思にどういう影響が出るか」と聞いた。ほとんどが「変わらない」と答えた。

太陽光業界対石炭業界の雇用は圧倒的に自然エネルギーの方が仕事がある。デトロイトの会議では国際化、過去の教訓、一括取引への参画、経済性がどうか。企業は無駄にお金を払いたくないゆえ、自然エネルギーを買う場合、価格を考える。会社として電力を買いたい場合、すべての会社は専門家ではない。

そのエネルギーはどこから来るのかと聞くと、「壁からくる。コンセントから来る」。あんまり発電の方法を考える必要はなかった。今はスキルが必要となっている。電力を知らないといけない。だからサポートが必要だ。ツールがないと、正しく電気を選べない。

全量を卸市場に卸させる。それによって流動性を高める。

Q:「Re100」に日本企業が加盟していない理由は何か。加盟しなければ日本企業にどのうようなデメリットがあるのか?
A:日本市場に十分関与していないためだ。政策環境が日本において非常に難しいと認識するに至った。これが企業が直接的あるいは間接的に自然エネルギーを調達しにくくしている。これは政策の困難が変わらない限り、変わらない。評価リスク、風評リスクはすぐどうこうというわけではないが、日本企業が国際的に事業を行う場合、自然エネルギーを支持しているとみられることがより重要だと思う。特にコンシューマー製品を提供している企業にとってはなおさらだ。自然エネルギーに対するサポートが主流の企業のコミットメントになるはずだ。

Q:社内的にはCO2を減らしている日本企業はたくさんある。ただ入るメリットがどこにあるのか?タタの9%は少ないのではないか?
A:トヨタ、日産などが色々やっているのは分かるものの、グリーン化の変革は始まったばかり。物を生産する場合、自然エネルギーで行いたい。それをなるべく早く実施したい。リスク管理の戦略だ。サポートがなければマーケットのシフトが起こらない。タタは少ないけれど、コミットをした。ここが鍵だ。具体的にそれを実現する手段を持っている。日本企業の中では100%をコミットすること自体が難しい

Q:電力のどこに変化が起きているのか?
A:電力の世界は劇的に変わってきている。歴史的にみれば、コジェネ、高電圧のグリッドなどから利益を得てきた。それはもうない。高く付く。ガスプラント、石炭プラント、原子力など非常に高くなっている。伝統的な規模の経済はなくなった。一方、新しい電力のビジネスで起こっている。自然エネルギー、エネルギー効率は劇的に変わってきている。需要家のほうに変化が起きている。
A:技術・供給が足りないのではなく、市場からのプルが牽引力となって動きがあった。デマンドサイドの会社の方が多い。風力は5社、太陽光は十数社。デマンド側は全社。そのためにデマンドサイドに集中している。

Q:日本のどこにRe100を邪魔している最大の理由は何か?「コメットすること自体が難しい」のはなぜか?
A:日本では自然エネルギー価格自体がまだ高い。よって調達が難しい。非化石価値取引市場が生まれようとしているが、「自然エネルギーの価値を使っていることを主張できることの仕組みがちゃんと出来ていない」。この2点だ。
A:日本企業の取締役にためらいがあるのかもしれないが、柔軟性があるのは良い点だ。ヨーロッパの会社にとっては自然エネルギーよりも温暖化ガスの削減のほうが重要だ。米国の会社は気候変動の話はしたくない。政治的に今分断されている。気候といいたくないので違う言い方をしているのかもしれない。
A:日本で必要なのはRE100のようなイニシアチブではなくて、企業がもっと低いレベルでコミットできる仕組みが必要なのかもしれない。まだマーケットが十分大きくなく、流動性がないので100%そもそも調達ができないかもしれない。マーケットのデマンドを作り出すことだ。われわれが100%という非常に高い目標を設定した理由は一番高い野心を目指すことがベストだと思ったからだ。かなりの会社が目標を達成していることは喜ばしい。われわれの活動についてはボクシングで言う「ワンツーパンチ」。変化を起こしたいのであれば、最初に自然エネルギーを使いたい、我が社はコミットしている。2つ目のパンチは政府がきて、会社の声は聞こえた。要求は聞いた。会社もサポートしていることが分かった。だから政府も政策を変えて会社がそうできるようにしよう。両方のパンチがあれば、このサイクルが好循環になる。これを要求する。会社はできますよ。じゃあ政府はもっとサポートしよう。というサイクルでどんどんできる良い循環。日本ではそれが良いのかもしれない。ただ、何らかのターゲット設定しなければ循環は始まらない。
A:日本の会社と言えば、日本の電力の消費だけではないと思う。海外に進出している。日本の外でスタートしてもいい。待つ必要はない。日本政府をプッシュしてワットメカニズムを導入して100%可能にするとか。
A:こういうことを話すとアメリカ人はビジネス志向だから、ベネフィットを見る。それもソフトなベネフィット。
Q:トランプ政権の誕生で温暖化対策の予算が削減されることはないか?
A:自然エネルギーは自らを正当化できる。雇用を生むし、エネルギー安全保障も高まる。経済性にも適う。何も気候のためという話をしなくても、経済のために仕事ができる。だから必要だ。だからトランプがそう言ってもあまり心配していない。マイナスの影響はあるかもしれないが、これは想定通りの影響だ。
Q:エネルギー政策における州政府と連邦政府の役割はどうなっているのか?
A:自然エネルギーの需要を主に引っ張っているのは州が決めているRPS制度(Renewable Portfolio Standard)のためで、自然エネルギーの比重が高い。電気調達量の一定量を新エネルギーとすることが義務づけられた。カリフォルニア州は30年まで50%を再エネ、ハワイ州は100%を45年までに目標としている。40年までにできるとしている。
A:新政権のリスクを過小評価できない。気候変動に役に立たないことをするリスクはある。今は一種の勢いがある。市場のモメンタムだ。クリーンエネルギーをプッシュする。多分この勢いはもう止められない。結局は自然エネルギーが今後数十年間で支配的な電源になっていく。これは止めることができない。新政権はスピードを抑えることは出来るが、止めることはできない。だからこそ、Re100はなおさら大事だ。企業関係者Re100を支持していることが目に見えるから。アメリカでは一般市民の中でクリーン化に対してサポートがある。100%以上一般の人が支持している。超党派。国民はクリーンエネルギー展開をサポートしている。こういうことがあるのであまり悲観的にならないで済む。キーパトナーの1つがカリフォルニア州だ。一部の州は引き続きクリーン対策を取っていく。他にも追随するところがある。経済を成長させるためにはあくまでもクリーンテクノロジーと再エネであると期待できると思う

 

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