北極圏開発、積極参加を
ゲスト:オラフル・ラグナル・グリムソン(北極サークル議長)
テーマ:北極開発の現状と課題
2018年2月13日@日本記者クラブ
NPO法人、北極サークル(事務局レイキャビック)のオラフル・ラグナル・グリムソン議長(前アイスランド大統領)が北極開発の現状と課題について話した。中国は1月26日、「北極政策白書」を発表し、「一帯一路」と結び付く構想を示した。
北極サークルはグリムソン氏が大統領時代に北極版ダボス会議を目指して設立した会議。北極圏は北緯66度33分以北の地域で、北極線が北限と定められている。
真冬(冬至)に太陽が昇らないことを「極夜」と呼ぶ一方、真夏(夏至)に太陽が沈まないことを「白夜」と呼ぶ。北極海のほか、グリーンランドなど陸地を含めた地域を北極圏と呼んでいる。
中国は今年1月、「北極政策白書」を発表し、北極海を渡る航路を「氷上のシルクロード」と呼び、広域経済圏構想「一帯一路」と結び付けた。資金難に陥った世界最大級のロシアのヤマル液化天然ガス(LNG)プロジェクト(総投資額270億ドル)を提供し、17年12月にはLNGの出荷を開始した。ヤマルは軍事的な要衝でもあり、中国は強い関心を寄せている。
一方、中国よりも早く関心を示しているのは韓国だ。同国は軍事面よりもむしろ経済面からの関心だ。13年に「北極総合政策」を取りまとめ、これを受けて韓国造船大手の大宇造船海洋が砕氷LNG運搬船3隻を受注した(共同発注は商船三井)。その後もLNG船の受注は続いている。最大で厚さ2.1mの氷を砕きながら航行できる。航海日数も短縮できる。
北極海沿岸にはカナダ、米国、デンマーク、ノルウェー、ロシア、アイスランド、スウェーデン、フィンランドの8カ国があり、「北極協議会」を構成している。北極サークルはグリムソン大統領(当時)のイニシアチブで設立された。
北極は海で、南極は大陸。南極には地球上の9割の氷があって、北極は1割くらい。氷がたくさん溶け出しているのも北極で、地球上で温暖化が一番進んでいるとも言われている(朝日新聞社会部記者の中山由美記者の解説「こんなに違う南極と北極」)。
グリムソン議長がくどいように述べたのはとにかくレイキャビックに来てくれ。毎年10月に3日間、世界中から2000人の政府官僚、北極政策担当者、政治家、実業家、科学者、プレス、学生などが集まり、100以上のセッションを行うという。
「いくら事務局が優秀でも毎年これだけの人数が集まるはずがない。人が集まるのは北極開発という人を惹きつけるテーマがあるからだ。今年の会合には河野太郞外相にぜひ基調講演を行ってもらいたい」(グリムソン議長)ようである。