はじまりの「ボーイミーツガール」

 

ボーイミーツガール(飯田橋ギンレイホール)

 

 

監督:ミシェル・ブジュナー
原作:パスカル・ルテール『Le Coeur en braille』
キャスト・マリー:アリックス・ヴァイヨ
ヴィクトール:ジャン=スタン・デュ・パック
飯田橋ギンレイホール@2018年5月30日

 

落ちこぼれのヴィクトールはクラスの優等生マリーに恋していたが、全く相手にされていない。ところが、そのマリーがテストで答えを教えてくれたり、「勉強を手伝う」と自宅に招待した急接近してきた。

親友のアイサムから「どん底のお前に最後のチャンスだ」と煽られたヴィクトールは、「女は信用できない」と平静を装いつつも、ウキウキと出かけていく。

マリーの指導で徐々に成績のあがってきたある日、マリーからプロのチェロ奏者になる夢を打ち明けられる。そしてマリーと初めて手を繋いて下校したヴィクトールは、分かれ際に頬にキスされ、すっかり舞い上がるのだった。

だが、マリーには誰にも知らない秘密があった。だんだんと視力の落ちる病気にかかっていたマリーは、音楽学校に行くためにそのことをひた隠しにしていたのだった。秘密を守るため、マリーは”目”が必要だった。

それに気付いたヴィクトールは、利用されていたことに腹を立てるが、マリーの情熱に動かされ、彼女の夢を叶えることを決意する。その日から2人の秘密の作戦が始まった。夢を追う少女と純粋で健気な少年のキュートな青春ラブストーリー。

12歳にして男子を振り回す小悪魔マリーに扮するのは、フランスで若き天才バイオリニストとして知られるアリックス・ヴァイヨ。チェロも完璧に弾けるようになるまで猛レッスンに励み、キラキラと輝くマリーを魅力的に演じた。

ヴィクトールには『ミモザの島に消えた母』のジャン=スタン・デュ・パック。愛らしいビジュアルとともに演技でも高い評価を受けている。

この2人のやりとりや大人との会話がどきっとする部分があってびっくりした。べッドで2人がいてヴィクトールがマリーにキスしようとしたら、「練習しなくては」とスルリと抜け出したり、間を外す。

自動車修理工場を営む父親(パスカル・エルベ)との会話もすごい。妻の死を認められない彼は「母さんは出ていった」と言い張るが、「彼女は死んだんだ」とめそめそ親父の尻をたたく。この当たりは映画を見ているとよく分かる。

広大な屋敷のマリーの父親(シャルル・ベルリング)は競売人、母親(オード・ライター)は美術バイヤーの仕事で忙しく、家庭を顧みない生活が続いていた。家には世話係のマルレーヌがいるだけだった。

「子ども時代と思春期の狭間にいる、輝くような俳優たちが心を打つ」(ラ・クロワ)、「この小さなカップルに心惹かれる」(ル・テレグラム)「感動的なコメディ」(ル・パリジャン)だ。

嘘も秘密も、まるごと君が好きな時代は遠い昔の話。誰にもそんな時代があった。貴方にも僕にも。そんな昔はもう戻ってこない。

 

 

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