「Thinktankを超えDotankに」桜田謙悟氏

 

SOMPOホールディングスグループCEO

 

SOMPOホールディングスグループCEO(最高経営責任者)兼代表取締役社長で、今年4月から経済同友会代表幹事に就任している桜田謙悟氏が5月31日、国立情報学研究所のオープンハウスで基調講演した。成長戦略の新たな司令塔として平成28年(2016)9月に設立された未来投資会議のメンバーでもある。

・私は金融サービスの社長をしている。デジタルイノベーションの世界で最も先にディスラプト(崩壊、分裂)される可能性のある損保業界の社長であると同時に日本にとっては最も重要かつ急成長している介護業界を扱っている業界のトップでもある。現場の声や悩みや提案をしてくれということが分かった。

・データというのは何なのか。喜連側川優国立情報学研究所長が先ほど科学的な発想から眺められたが、ビジネスサイドの人間としては「データ イズ マネー」だとか「データ イズ ニューオイル」ということを何となく分かっているものの、本当に分かっているビジネスマンは世界にはいない。正解ということではなく、私の考えを話したい。

・SOMPOは売り上げで約3兆6000億円。雇用者数8万名。30カ国、218都市で事業展開している。

・損保にとって昨年は厳しい年だった。業界全体で支払った保険金は1兆5000億円。SOMPO だけでも5000億円。とんでもない金額だ。準備金や再保険があるからストレートに決算に響いてはいないが、皮肉に「もう損保事業には新規参入したくない」と言われる。あまりメリットない。

・業界の外からも猛烈にディスラプトされてきている。もしかしたら銀行のほうが厳しいかもしれないが、金融サービス業はこういう状況だ。

・VUCA。私が大好きな言葉だ。Volatility(変動性)、Uncertainity(不安定性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧模糊性)の略語だ。もともと軍事用語だったが、現在はビジネスでも使われている。無茶苦茶の時代、何を考えてもしようがない時代。

・今年のダボス会議でパネルをやってきた。セールスフォース、U2、ラッパー。彼らはIT産業に巨額の投資を行っている。「データはおれたちのものだ」「データを取り戻せ」「GAFAにただでやるな」などと言っている。スウェーデンで地球環境を守ることで闘っている高校生もいる。こういう人たちが集まって議論する。オープンイノベーション。エコシステムができる。全然違う経験を持った人たちが集まってきたオープンハウス。

・今第4次産業革命の時代と言われている。社会の抱えている課題にソリューションを提供することに意義があった。第1次産業革命は農業で飢えに対するソリューションを提供した。第2次は蒸気機関で、筋肉に対するソリューションを提供した。第3次はインターネット革命。距離とか時間に対する制約を取っ払った。第4次産業革命は何か。世界のアーキテクチャ―を作れ。答えはない。良い意味でも悪い意味でも脳に対する挑戦が始まった。脳に対するダークサイドであればクライシスでもある。

・トランプ米大統領もなかなかチャーミングなおっさんだが、変なことも言っている。ヨーロッパもぐちゃぐちゃ。中国もしっかりしているように思えるが、中は大変。格差を広げるかもしれない。

・一般社会の中ではデータに対するアレルギー、嫌悪感が出始めている。これは絶対に起こしてはいけない。すべてのテクノロジーは英知を適用することによって人類のためにあることをはっきりさせなければならない。データとゲノムについてはこの問題が顕著になってくる。

・新渡戸稲造氏の唱える武士道。3.11の整然とした行為。はっきりした宗教ではない。これが日本を形作っているのではないか。

・保険の社会は思いっきりディスラプションする。自動車保険があるが、自動運転、シェアリングによって・・の世界に組み込まれていく。火災保険。ニューリスクだけ。

・世界の保険会社が頭を悩ましているのはサイバーテロだ。全く読めない。損害の規模が分からない。発生するチェーンも分からない。

・これまでは自動車会社、保険会社、銀行とあったが、プラットフォーマーがくる、Xaas(X=未知の値、aas=as a Service=クラウドサービス全般)がくる、スタートアップ、銀行の名前が無用のアリペイがくる。保険業法、銀行業法など法律で管理・監督できたが、業界・産業という定義が完全に崩れた。横から見ていかないとこれからの産業は成り立たないし、あらゆる法律は機能しない。横をどう見るか。法律そのものが無意味になってくる。ただ遅れてくるだけでなく機能しなくなる。

・Xaasはどこで区切るのか。アリペイは保険会社か。法律がビジネスや社会の変化に追いついてこなくなってきている。

・会社の存在意義に書いてあるのは最高水準の安心・安全・健康のサービスを提供するために存在する。保険とは書いてない。安心・安全・健康のテーマパークと言っている。具体的に身に見え触れるものを提供する。保険は一番下に置いているラストリゾートだ。みなさんが考えたくないことを考えてきた。

・人とデジタル。東京、シリコンバレーにデジタルラボを作った。シリコンバレーに来る天才の多くはインドとテルアビブや深圳。GEがリストラしたので彼らを雇った。ラッキーだった。

・1000億円くらいかけ2つの会社を買収し介護事業に新規参入した。SOMPOケアグループは国内2位の介護事業者になった。400施設。利用者数8万人、職員数2万4000人。

・入ってみて気づいた。リアルデータの宝庫だった。バーチャルデータとの交換のオファーがあったが、お断りした。バーチャルデータの怖さはそれが本物かどうか分からない。それによって操られる人が多いのであたかもそれが影響力があるようにみえる。データは何かという教育が大事だ。

・長寿社会をネガティブにとらえているが、日本の持つ最大のアセットかもしれない。105歳以上の行動パターン、生活パターンについてのリアルデータは日本ほどたくさんあるところはどこにもない。105歳すぎたら長生きする人が多い。なぜか。意外と認知症になる人も少ない。日本はデータの宝庫だ。

・日本はいなくてはならない国になりたい。予定調和とソフトパワー、それに武士道という規律に支えられた国が何をしてくるのか。世界は見ている。

・Think tankを超えてDo tankになりたい。問題ははっきりしている。問題はなぜできないか。どうやってやるかに切り替えている。やるしかない。

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