実山椒の香りがたまらないお茶漬けの素「ちりめん（チリメン）山椒」

 

 

「『ちりめん山椒』にはまっている。ちりめんじゃことピリッとした風味の山椒が温かいご飯の上で絶妙に融合して食が進む。実に上品で、慎ましやかな風味がたまらない」とこのブログで書いたのは2005年1月30日。ちょうど15年前だ。

いただいた「ちりめん山椒」は京都佃煮舗「やよい」（京都市東山区下河原通八坂鳥居前下ル上弁天町439）のものだった。ちりめんじゃこはカタクチイワシの稚魚を煮て乾したもので、そのときはその味が気に入っていた。

「吟味したちりめんじゃこを酒で蒸し、実山椒をふんだんに混ぜて香りをのせ、みりん、しょうゆ、酒でぱらりと炊き上げました。海の幸、山の幸を京・祇園の風情を心に託し、雅の味に仕立てました。独特の歯ざわりと美味しさをお楽しみ下さい」とホームページは書いている。

2005年はこのブログを始めたばかり。ブログに写真を乗せることもまだやっていなかった。だから写真はない。活字、活字、活字の行列である。動画全盛時代の現代からみると、昔日の感がある。

 

 

去年の11月に孫の七五三で八坂神社に行った。その帰りにのぞいたのがはれま祇園店（京都市東山区祇園町北側251）。そこで「チリメン山椒」を買った。なぜだか「ちりめん山椒」ではなく、「チリメン山椒」だった。理由は分からない。

そうなってくると、眠っていた調べ癖が動き出した。ちりめん（チリメン）山椒の本家本元はどこか。これが知りたくなってきた。しかし、実はこれがはっきりしないのである。手掛かりは1つ。「50年程前に、京都の花街の1つである上七軒の料理人であった晴間保雄が、ちりめんじゃこと実山椒を、炊き合わせたのが始まりといわれている」（ウィキペディア）。

はれまのホームページに「はれま物語」のタグがある。そこに「はれまのはじまり」が書かれている。

「ちょっと昔。今からだいたい、50年ぐらい昔。京の家庭で普段から親しまれていた、チリメンじゃこと実山椒を、宮川町の料理人・晴間保雄がいっしょに炊いてみたのがはじまりでした。料理人の勘が引き合わせた、海の幸と山の恵みのおいしい出会いでした」

「昔は手みやげといえば、買うものではありませんでした。家で作ったり、沢山穫れたものを”お裾分け”する感覚で、持っていくのが当たり前でした。はれまの”チリメン山椒”は、最初から『商品』として生まれたものではありませんでした。初代が台所で作り、親しいひとに配っていたものでした」

「初代は『おいしい！』『またつくって！』ともらった人が喜んでくれるのがうれしくて、せっせと炊いては、親しいひとへ配り続けました。顔見知りの舞妓さんや芸妓さんもその味を大そう楽しみにしてくれました」という。

初代が病に伏したのが昭和46年（1971年）。初代から”チリメン山椒”の作り方を聞いた家族が自宅の台所で炊いたものを玄関先で細々と売り始めた。商売というよりも、病になった初代の面倒を見るためだった。

しかし、知っている人以外にはなかなか売れなかった。宣伝もしなかったから当たり前。そのうち同じような商品が東京で大々的に売られ始めた。そうなると、本家は京都ということになった。

最初に作った「はれま」にも、遠方から多くのお客様が足を運んで下さるようになったという。

「はれま」は昭和56年（1981年）に株式会社を設立している。やよいは昭和57年創業し、会社設立は昭和63年（1988年）。最初に作ったのは確かに晴間保雄氏なのだろう。どちらも先代は料理人だし、実際に作り始めた家族は兄弟姉妹かもしれない。

ちりめん（チリメン）山椒は京都市の名物ではあるものの、近年は全国各地で生産されている。多くの製造元が生産しており、味もそれぞれ異なる。現在では「しののめ」「はれま」「やよい」が「ちりめん山椒の御三家」と言われている。

そんなに難しい料理ではないだけに、誰にでも作れる。問題は味の配合だろうか。全国どこへ行っても名物に事欠かない。海の近くに行けばちりめんじゃこはどこでも獲れる。実山椒も山間部には多い。

はれまは紀州・和歌山産、やよいは兵庫・丹波産の実山椒を使っている。自分としては地元意識もあって丹波産実山椒を使っているのは嬉しいが、やよいの味は15年前ですっかり忘れた。東京の百貨店で買えるのなら、買ってもう一度味を比較したいと思っている。