「濃溝の滝」で沐浴し「涅槃仏」では合掌、強風に吹き飛ばされそうだった「野島埼灯台」を走った300キロ南房総ドライブ

 

 

東京湾アクアラインの人工島「海ほたる」5階から東京方面を眺める

 

新型コロナウイルスを警戒しながら千葉県南房総をドライブした。午前7時30分ごろ、練馬区の自宅を出発し、帰宅は午前零時15分前だった。ポカポカ陽気に誘われて、同じような気分の人が多かったようで、行きはよいよい、帰りは大渋滞に巻き込まれた。走行距離約300キロ。

東京湾アクアラインは海底トンネル(約10キロ、トンネル)と橋梁部(約5キロ、ブリッジ)の合計15キロ。東京湾の中央部を横断している。木更津沖合い4.4キロには海上パーキングエリアの人工島「海ほたる」(木更津市中島2533)がある。経営しているのは東京湾横断道路株式会社(東京都品川区)。

結婚して最初に住んだのが松戸市で、最初の地方勤務も千葉支局だったので千葉とは縁が濃い。しかし、そこの7年ほど住んだのちに東京西部に引っ越しし、以降疎遠になってしまった。確か10年ほど前に、初孫が1歳になったかならないかばかりの頃に一緒に養老渓谷に行ったときが最後で、最近は千葉県に足を踏み入れていない。「海ほてる」も東京側がトンネルで、千葉側がブリッジであることもすっかり忘れていた。

 

濃溝(のうみぞ)の滝

 

同上

 

木道を歩く

 

最初に目的地としてナビにインプットしたのは家人の要望である「濃溝の滝」(のうみぞのたき、君津市)だった。洞窟のシルエットがハート形になるといわれ、その幻想的な光景がSNSで拡散されて一躍有名になったという。ただ、そうなるのは「光がほどよい角度で射し込む春と秋の数日間だけで、それも早朝に限られる」とのことだという。

どこの世界にも仕掛け人がいて、一生懸命に「名所」「名跡」を創りだしている。それにつられて大勢の観光客が動く。この日は1台も止まっていなかったが、昨年の今頃は何台も大型バスが横付けしていたという。

とにかくコロナウイルス禍で世界は騒動としているものの、まだこんなものを見物に出掛ける余裕があるのだから、日本は平和と言えば平和なのかもしれない。イタリアは70歳以上だと診療してもらえない。コロナにかかったら、もう死を持つしかないようだ。

現場の清水渓流広場の駐車場から下に降りると、長い木道があり、どうやら周辺は湿地帯のようだ。旧河道であり、水田の跡らしい。整備されてきれいな小川が流れており、6月頃にはゲンジホタルやヘイケホタルが乱舞する光景が見られるという。その先に濃溝の滝がある。

もっと詳しいことを知りたい人は2017年6月1日付の朝日新聞か、博物月報を読んでもらいたい。

 

地魚定食は金目鯛の尾頭付きだった

 

8品目盛りの刺身定食

 

濃溝の滝から鴨川道路を南下したところは鴨川だった。走っていて目に入ってきたのが太海浜(ふとみはま)にぽっかり浮かぶ仁右衛門島(にえもんじま)。千葉県では最も大きな島で、かつ島の所有者である平野仁右衛門氏の名にちなむ。唯一の有人島だという。

千葉県に有人島があるとは考えてもいなかった。全島が砂岩で覆われ周囲4キロの島だという。源頼朝や日蓮の伝説で知られ、千葉県指定名勝となっている。

この太海浜に位置する外房黒潮ライン沿いの海鮮料理の店「磯膳よしえい」で昼食をいただいた。自前の網で水揚げした鮮度抜群の地魚料理と太平洋をパノラマに見渡せる景観が自慢の鮮魚レストランだ。地魚御膳は金目鯛の煮付け、小鉢、味噌汁、御飯、お新香。金目鯛は切り身がくるかと思ったら尾も頭も付いている丸々一匹の尾頭つき。生姜の風味が少し甘い煮汁とマッチして極めて美味だった。

金目鯛の尾頭つきは生涯で2度目。昔、新宿の鮮魚料理店で、「岡持ち」(出前箱)に乗せた金目鯛を席まで持ってきてくれたことがあった。つい金目に誘われて注文した。刺身のほか、煮付けでいただいたことを覚えている。普通に一匹を煮付けて出すもので豪華さはなかったが、いい味が出ていた。これで2200円なら都会では安い。

 

季節としては終わり頃の菜の花

 

まだまだ元気なストック

 

家に帰って花瓶に生けました

 

同じ鴨川市江美太夫崎(えみたゆうざき)にある道の駅「鴨川オーションパーク」に立ち寄り、パーク横手の畑で花摘みを楽しんだ。10本550円也。3月も後半に入った菜の花は時期的にもう終わりそうだったが、ストックはまだ元気に咲いていた。

長い花穂に艶やかな甘い香りが特徴のストック。半耐寒性の1年草。1つの茎にたくさんの花を付けることから切り花やアレンジメントなどによく用いられる。

ここでの花摘みは2月中旬から5月連休頃にかけて。菜の花やストック、キンセンカなど。夏以降にかけてはそら豆や野菜などの収穫体験も行っている。海を眺めながらのんびりと過ごすのも楽しい。

 

どっしりと横になる涅槃仏

 

夕陽に微笑む死の直前の涅槃仏

 

小学3年生くらいの子が寝転ぶとこんな感じ

 

”山頂”はのっぺらぼうな台地だった

 

これが山門で、250mほどで”山頂”に着く

 

ここが2つ目の目的地・常楽山萬徳寺の釈迦涅槃佛(館山市洲宮=すのみや)。家人がネットで見つけてきた。千葉県内ランキングには必ず入っているという。館山市ランキングで引くと、人気ナンバーワンだった。

境内に安置されている体長16メートル、高さ3.75メートル、体重30トンの涅槃佛は青銅製では世界最大級のものだという。

境内には僧侶と思われる女性(30代~40代)が2人おり、5本の線香に火を付け、線香台に備えた。彼女らに倣って中央で合掌し、台座を時計回りに3周し、らせん状に3段上がるようになっている。最後は足裏に向かって祈願すると大願成就するという。

住職は1人、途中の事務所で拝観料(入山料)の徴収をしていた。大人1人500円、高齢者(65歳以上)400円。

南房総観光ポータルサイト「房総タウン.com」によると、「この涅槃仏は仏教の修行を重ねた僧侶が発願から22年の歳月をかけて1982年(昭和57年)に建立したもの」だという。普通のお寺のような「檀家」はいないという。お堂もなく、僧侶も(事務所に籠もっていて)事実上いないお寺は初めてだった。それでも涅槃仏は結構人気で、いずれ拝観料でお堂が建つかもしれない。

 

房総半島最南端に立つ野島埼灯台(南房総市白浜町)

 

房総半島最南端の南房総市白浜町に押し寄せる海風

 

野島埼灯台案内板は参観(見学)中止だった

 

最後に訪れたのが房総半島最南端に位置する野島埼(のじまさき)灯台。海は高波が凶暴に浜に打ち寄せ、風も強く吹き荒れ、足をしっかり地に着けて歩かないと吹き飛ばされそうだった。

野島埼灯台は全国に16しかない「のぼれる灯台」の1つで、1869年(明治2年)、日本で2番目に点灯した灯台だ。本来なら中を参観したいところだが、生憎新型コロナウイルス対応で参観(見学)中止が「当面の間」続いていた。もっとも同灯台を訪れたのも午後6時を回っていたので、いずれにしても無理だった。

 

東京に向かう車列を海ほたるから眺める(午後10時すぎ)

 

訪問地を訪れている観光客はそんなに多くはなかった。特に団体の観光客はツアーの中止でほぼゼロに近い。ほとんどが個人なのだろう。みんなコロナを警戒して自宅に籠もっているのだろうか。

それにしても車は多かった。感染対策として車なら大丈夫と考えたのかもしれない。館山自動車道はびっしりで、いろんなところから高速に入ってくる。東京湾アクアラインも海ほたるまで渋滞が延々と続いた。

21日(土)の上り車線は全線にわたって15kmの渋滞情報が流されていた。15km渋滞ということは要はアクアライン全線が渋滞しているということだった。東名や関越などで20km、30km渋滞がたまにあるので「そんなでもないな」と思っていたら、アクアラインは全線で15kmしかなかった。

 

あさりそばを食べた

何とか海ほたるにたどり着き、トイレ休憩。とたんにお腹が減った。あさりそばはそんなにうまくなかったが、御飯のほうはうまかった。生きていることの幸せを思った。

イタリアやフランス、スペイン、米国の一部州は強制的に外出禁止である。日本は自己リスクを犯しながらもまだこうして自由が残っている。それがなくなることはとてつもなく怖いが、まだこうして享受できている。自由のすばらしさを味わった1日だった。

こう書いたが、24日になって、小池百合子東京都知事の「首都封鎖」の可能性発言を聞いて、自粛ムードに水を差した自らの行為に反省を覚えている。自粛ムードが緩和しているムードを感じたのと、ストレス発散を解消するのが狙いだったが、同時にメガクラスター発生の危険性に目をつぶっていることには問題ありと考えた。

経済効果との兼ね合いで何とも悩ましい。

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