新型コロナで日本は「緊急事態宣言」再発令へ=英は3度目のロックダウン、独も追随
■緊急事態宣言、再発令へ
菅義偉首相は4日の年頭記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、昨年4月に続いて緊急事態宣言を再び発令すると表明した。対象は東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県で期間は1カ月程度を想定している。その後全国に拡大する。
感染リスクが高いとされる飲食店の営業時間もこれまでの午後10時から午後8時に短縮する方針だ。観光需要喚起策「Go To トラベル」の停止も継続する。教育現場への影響を回避するため、小中高校や大学への休校要請はしない考えだ。
住民や事業者の活動に一定の制約を求めるため、政府は解除の基準を事前に示す方針だが、専門家による分科会が昨年まとめた4段階の感染状況を示す。最も深刻な「ステージ4」の6指標から脱却できなければ、期間は延長するしかない。
6指標を基に国と自治体で協議して各自治体のステージを検討する。感染の深刻度は各地の医療体制などでも異なるため、あくまでも総合的に判断する。6指標のうち最も重視しているのは「直近1週間の人口10万人当たり新規感染者数25人以上」だ。
これを東京に当てはめると、約500人となる。5日の東京の新規感染者は1278人。778人減らし、1週間維持しなければならない。かなり厳しい。1カ月程度で脱却できるかどうか。ステージ3まで下げられるかどうか。難しい。
東京 ステージ4 ステージ3
・病床使用率(%) 74.9 50以上 20以上
・療養者数(人) 77.61 25以上 15以上
・陽性率(%) 12.9 10以上 10以上
・Ⅰ週間の感染者数(人) 46.22 25以上 15以上
・感染者数の前週比(倍) 1.23 1以上 1以上
・感染経路不明者の割合(%) 69.7 50以上 50以上
■英国は3度目の都市封鎖、独も移動制限
これまではマスク着用、3密回避、消毒徹底などで対応してきた。昨年7月26日には本ブログでも「明るい兆しが見え始めた」と書いた。コロナウイルスが弱毒化するという予測だったが、現実はむしろ強毒化しているようである。
その最大の理由が変異種の流行だ。英イングランドでは感染力がより高い変異種が猛威を振るっており、日本国内でも新規患者が見つかっている。従来種は何とか対応してこれたが、新変種は不気味である。多くの人がそんな気持ちになっているのではないか。
英国のジョンソン首相は4日夜にテレビ出演し、5日から3度目の都市封鎖(ロックダウン)を宣言した。不要不急の外出を制限するほか、学校も閉じて対面授業を休止した。少なくても2月半ばまで続けられる見通し。昨年3月と11月にも実施している。
スーパーマーケットなどを除く大半の店舗や飲食店の店内営業が禁じられる。4日に新たに発表された英国の感染者数は5万8784人と、1日当たりの過去最高を記録した。4日の日本の新規感染者数は4909人。10倍以上である。
ロンドンでレストランを経営している英国の知人から年初にクリスマスカードが届いた。「レストランもコロナの影響で半年近く営業中止。政府の援助を利用して持ち堪えている。非常に厳しい状況ですがお客様の激励の言葉に応えられるよう、これからも営業を続けていく」とあった。
「2000年は今までにない歴史のページを作ってくれた。毎日COVID-19のニュースばかり。感染が始まった時はまさかここまで長く続くとは誰も予想もしていなかった。3月のロックダウンは数週間で解除されると思っていたのに、解除されたのは7月初め」
「どこにも行けず、生活必需品販売店以外は全て閉店。オフィスワークの人たちは自宅勤務。街中は不気味な静けさだった」と綴っている。世界共通の現象だ。嘆きたくもなる。
「クリスマスの数日間は規制が緩み家族でお祝いができそうですが、その後が心配です」とある。懸念通り、3度目のロックダウンがやってきた。
ドイツのメルケル首相は5日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための規制を再び強化すると発表した。感染が深刻な地域の住民は居住地から15キロまでに移動が制限される。10日までとしていたレストランや商店、学校の閉鎖は少なくとも1月末まで続ける。
英国で感染力の強い変異種が広がっていることを警戒しているようである。
■病床が増えない背景に「民間病院」の減収懸念
イングランドのロックダウンは患者の急増に伴う医療崩壊への危機感が背景にありそうだが、日本は欧米に比べればはるかに感染者が少なく、国全体の病床数も多いはずだ。それでも病床は増えない。危機感が薄く、甘い見通しのまま第3波の襲来を座視してきた結果なのか。
日経新聞は病床が増えない理由について、6日付朝刊で、「民間病院の対応の鈍さ」を指摘する。重篤患者に対応する急性期機能を備えた全国約4200病院のコロナ対応状況を昨年9月末時点で厚労省が集計したところ、公立病院は694病院のうち69%、日赤や済生会といった公的病院は748病院中79%が対応可能とした。
これに対し、国内にある病院全体の7割以上を占める個人が運営する民間病院は2759病院中18%にとどまった。民間病院が尻込みするのは、経営に大きく影響するためだという。
私が通っている大手公営病院の先生も「民間病院はコロナ対応で月300万から400万円の減収になっている。コロナに力を入れれば入れるほど赤字が増える」と言っていた。コロナは大きな減収要因なのだ。誰も減収になるようなことは避けたいはずだ。
病院経営を支援するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)によると、「大きな収入源となる手術などもあおりで延期になるケースが多く、コロナ対応が『減収要因』になっている」という。
菅首相は5日の自民党役員会で、「医療崩壊を絶対に起こさせない決意だ。民間の病院にも協力していただきたい」と述べた。医療従事者の確保などに充てる支援金として2700億円を用意したと説明した。
日本ではコロナ向けは数床から十数床程度で運用する病院がほとんどだという。だが大学病院には急変に備えてICU病床を1~2床は空けておくところが多い。病床を集約すれば効率化できるとも言える。
コロナは日本の組織がいかに危機管理的なシステムに即応できないものになっているのかを暴き出している。このことをどれだけの人が分かっているのか不安だ。