次世代のネットワーク基盤「IOWN」実現のためにも必要だったドコモの完全子会社化=NTTのゲームチェンジ

 

ドコモの完全子会社化の目的

 

ゲスト:澤田純(日本電信電話会社社長)
2021年2月19日@日本記者クラブ
オンライン@Zoom

 

昨年末にNTTドコモを完全子会社化した日本電信電話会社(NTT)の澤田純社長が子会社化の背景を説明するとともに、コロナ禍でのリモート社会、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展を見据え、同社が進める次世代ネットワーク構想「IOWN」(アイオン)などについて話した。

・ドコモの完全子会社化と料金値下げ、Beyond5G、グリーンICTの3つについて話したい。

・もともと専攻が土木工学で、電気通信の会社に入った。電電公社時代は9割が電話の収入だった。現在は携帯電話を入れて2割以下。そういうチェンジを経験している会社だ。

・携帯値下げをやるためにドコモの完全子会社化をやったわけではない。もともと私ども自身が将来の戦略としてどのように世の中の役に立っていくか。我々の目指す方向をコロナ禍のリモートワールドの中で新しいサービスの開発、DX、研究開発(IOWN),新規事業の4つの軸で広げていきたい。

・DXの中で心配していたのがドコモだった。シェアは43%と現在も1位だが、この中にはガラ系ユーザーもたくさん含んでいる。他社に比べるとかなり大きい。800万以上。これがスマホに変わっていく。シェアも落ちていく傾向にある。

・それを象徴していたのがモバイル・ナンバー・ポータビリティー。12年連続でマイナス。営業収益も利益もメガ3社の中で3位。厳しい状況が将来も続いている。ドコモを強くしないと全体のグループが強くならないと考えた。

・我々が現在掲げているIOWNという次世代の基盤を作るためにもドコモの成長が欠かせないが、国内競争が厳しい上にGAFAを始めとするビッグテックがITだけでなく通信の業界にも参入してきている。いわゆるボーダレス競争が起こっている。

・自分たちが行きたい能動的な方向と競争に対抗していく受動的な方向の両方を考えた場合、ドコモの強化を図っていくことが重要だ。そのためにはドコモが移動や固定のサービスを連携して出せたり、シナジーを取れたりするためには意思決定を迅速にするためにもドコモの完全子会社化が必要だった。

 

20GB月2980円の新料金プラン(ahamo)

・時期を同じくして菅政権が発足した。我々が強くなるのは市場の中で勝てるサービスを出していくということと等価だから、積極的にニーズとして捉えていく下げていく。

・20GB2980円(月額)の新料金プランを出した。オンラインで契約する。5Gギガホユーザーには6650円、ガラ系ユーザーにもスマホに変えやすい料金を提供する。

・ロンドン、パリに近い料金体系をとるとともに、品質ではドコモがかなり上である。こういうサービスが実現してくる。

 

NTTを構成する3要素

・5Gのメーカーは外国ばかりだが、ビヨンド5Gあるいは次のインフラはより日本が関与できるようなエコシステムを構築していきたい。そのためには何が必要か。新技術、新しい考え方・構想が必要だ。

・AIを使いながらいろんなものがデータ化されていくデジタルツインコンピューティング(リアル世界をサイバー上に再現する)に入っていく。これを実現するためのインフラが必要で、現状の電気の方式だけではエネルギー処理が大変なので光を使ったオールフォトニクスネットワークを考慮する。

・こういうネットワーク同士が相互接続できるよう進めるためにコグニティブ・ファウンデーション(システムとシステムをつなぐソフトウエア)の3階層を構築していく。サービス面を入れると4階層。こういう構想を企画した。

・デジタルツインコンピューティングによっていろんなシュミレーションができる。いろんな情報で行動を楽にする、あるいは便利にする、あるいは安全にすることが可能になる。

・データをベースにしたアプリケーションがどんどん増えてくる。この世界でもこれを支える基盤、あるいはリアルの世界とつなげるインタ-ラクション層などの機能が求められてくる。これを体系的に作り込んでいく。こういう動きを始めている。

 

オールフォトニクス・ネットワークの考え方

 

・コンピュータのデータ容量自身は2050年を見通すと4300倍に増える。必然としてコンピュータの能力、通信の能力の向上が求められる。光を想定している。

・現在の半導体は高集積度の競争をしているが、厳しくなってきている。熱とエネルギーだ。集積回路は電子が動いて演算している。電子が動くと熱が出てエネルギーが使われる。熱くなるので装置を冷やさなければならない。また電気がいる。

・データセンターについてNTTも世界第2,第3位の面積を持っている。一番のボトルネックは電力。トースターを扇風機で冷やしているのがデータセンターの状況で、より処理を高めないと4300倍のトラフィックに堪えられない。熱の問題で能力を上げられない。

・それで狙ったのが通信に光を入れるだけではなく、半導体に光を入れる。それによって低消費電力、高品質・大容量、低遅延が実現する。これをリアルのインフラにしていく。これがオールフォトニクス・ネットワークの考え方だ。

・大容量なので臨場感が非常に高い。4K⇒8K⇒16K。かなり高精細なものを瞬時に遅延なく送る。遅延がないということはデジタル化をしないで生のまま送るということ。胃カメラはきれいな画像をそのまま送ってくる。あれをデジタルに変えて送ろうとすると遅延が発生する。

・スタジアムで拍手をしても遅れて伝わる。そういうことがないようにするためにオール光ネットで直視する。熱気のあるエキサイティングなスタジアムの絵を見てエキサイトする観客の状況さえもフィードバックする。それを瞬時に行うとあたかもプレーヤーも観客も同じ場所にいるかの如く距離を、時間を克服できるのではないか。今年にはこれを実現したい。

・エネルギーを抑制するのに効果的なのは半導体だ。回路をすべて光ファイバー化するためにはまだ時間が必要だが、ただ半導体の中は電気、半導体の外側は光のようにミックスしたものははやってくる。

・データセンターはサーバーで構成されているが、サーバー内の部品は電線でつながれている。この電線を光ファイバー化する。かなり飛ぶし容量も増える。データセンター1個がサーバーのようになる。拡張的なシステムに変えることができそう。25年を目標としている。フォーラムを米国内に作り、米企業を取り込んで研究を継続中だ。

・これは現在のITシステム、通信システムを変える。ゲームをチェンジする。OSも変わる。アプリケーションも変わる。今動いているものをより高度なエコシステムに変える。こういうゲームチェンジが可能になる。

 

アフターコロナ社会のトレンドⅠ

 

・ソーシャルディスタンスを確保する一方で、経済活動を活性化させる。矛盾した2つをどう実現するかが現代の課題となっている。我々は分散型社会(リモートワールド)を構築することで対応できないかと考えている。

 

アフターコロナ社会のトレンドⅡ

 

・グローバリズム(人・物・金の自由な移動)がコロナによって止まっている。ローカリズム(人・物・金の移動に制約)、自分たちの概念を大事にしていこうという考え方も存在する。この2つを併存する概念がいるんじゃないか。ニューグローカリズムの中で日本自身が自立して世界に貢献していきたい。そのためには新しいコンセプトと技術を世界の人たちと一緒に作ってきたい。ゲームチェンジが必要だ。社会の持続的な成長を目指したい。

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