2年ぶりリアル開催の環境総合展「エコプロ2021」=10%軽量化実現のNCVコンセプトカーやコオロギ大量生産による昆虫食への挑戦

東京ビッグサイト(12月9日午後3時30分頃)

 

■2年ぶりにエコプロ開催

 

一般社団法人サステナブル経営推進機構と日本経済新聞社は12月8日(水)~10日(金)の3日間、東京ビッグサイトで、「持続可能な社会の実現に向けて」をテーマに総合環境展「エコプロ2021」を開催した。

昨年は新型コロナウイルスの影響により、実展示での開催を見送られたが、今年は2年ぶりにリアル開催を実現。企業、自治体、NPO、大学など環境やSDGsへのさまざまな取り組みを紹介し、多様な視点から持続可能(サステナブル)な社会の実現を提案した。

環境には以前から関心を持ってきたが、自分のテーマとして意識し始めたのは2016年ごろから。経産省、環境省が主体となって第1回ナノセルロース展が開催されたためだ。ナノセルロースナノファイバー(CNF)は鋼の5分の1の軽さで5倍の強度を持つ夢の素材だ。

学術分野でも用途開発でも日本が世界の最先端を入っている。日本には豊富な森林資源を有するとともに、川上を担う製紙産業から用途開発を担うさまざまな産業まで高い技術の集積もある。CNFという新たな産業を育て、国際競争を勝ち抜くための大きな強みだ。

 

CNF複合材で作製されたコンセプトカー「NCV」

 

同上

 

■19年にはコンセプトカー「NCV」披露

 

環境省の委託事業として2016年に始まったのがNCV(Nano Cellulose Vehicle)プロジェクト。京都大学が代表事業者となり、22の大学・研究機関・企業等で構成するコンソーシアムを構築し、サプライチェーンの一気通貫体制を実現した。

次世代素材CNFを活用し、2020年に自動車で10%程度の軽量化を目標とするプロジェクトで、その成果として、CNF複合材で作製されたコンセプトカーを2019年の東京モーターショーで初披露された。

CNFを活用した材料、部材、自動車部品開発、および各段階の性能評価、CO2削減効果の評価・検証を実施した。自動車が選ばれたのは国内市場が大きく、CO2削減効果が期待できる分野だったため。

材料・製品メーカーと連携し、CNF軽量材料の用途開発を進め、実機搭載によるCO2削減効果(燃費削減)等の性能評価と早期社会実装に向けた導入実証を行った。

 

ミライの車にチャレンジ

 

樹脂素材改良》内装材・外装材の全面代替をめざす

・PP、PA素材を使用する部位⇒CNF複合材へ

・薄肉化による軽量化を実現

金属素材代替》外部の可能性を見極めボディ、エンジン、構造部材へ切り替え

・金属部材より比重が小さいことを生かす

・強度と耐熱性を見極める

その他挑戦》ガラス等

・透明樹脂をCNFにより強化

・透明性を生かした部材の活用

 

コオロギはSDGsのシンボル食材

 

■国産食糧用コオロギに挑戦する月夜野ファーム

 

個人的に関心のあったのはSDGsのシンボル食材で話題の「コオロギ」を使ったお菓子やおつまみなどを紹介した食糧問題解決ソリューション展。ソリューション展を名乗るにはいささか寂しかったが、昆虫養殖業界トップの生産量を誇る月夜野ファーム(群馬県利根郡みなかみ町)が出展していた。

月夜野ファームの水野氏は12月10日、特別企画展スペシャルステージで、同社の取り組みについて、「創業者の片山朱美(同社代表者)が約30年前マンションの一室でコオロギの生産を開始し、爬虫類業界のパイオニアとしてコオロギの生産を行っている。恐らく日本で一番コオロギを生産しているのではないかと自負している」と述べた。

さらに月夜野ファームの卓越性について、爬虫類に活きエサを提供する上で最も品質が高いと指摘。今般食糧用コオロギ自体が世界的に注目されていることで当社としては食糧用コオロギに挑戦していかなければいけないと表明した。

同社は価格を含めいくつかの課題はあるものの、「国産食糧用コオロギへの挑戦」で東京大学大学院新領域創成科学研究科の永田晋治教授と共同で大量生産も含めて研究していくと語った。

 

フタホシコオロギ

 

■東大と共同のテーマは大量生産

 

次いで永田教授が「国産食糧用コオロギへの挑戦」と題して要旨以下の通り話した。

・我々がSDGsで関わっているのはフードロスの消滅。大体30年後にはFAOの予測では「人間が食べるタンパク質の半分は昆虫食で賄わなければいけないのではないか」とみている。

・今から昆虫食に対する意識を高めていく必要がある。文書で書くと「昆虫食における代替タンパク質の地球規模での補償」が人類の目標になっている。

・昆虫を食べるというと、皆さん「え~」と思うだろう。でも食べている国とか地域とか一杯ある。昆虫のイメージは蚊だったり穀象虫だったりゴキブリだったり、ゴミオシダマシというきたないものをイメージしているが、こんなの食べるのかという意味ではなくて、もっと美しいフタホシコオロギを使おうとしている。

・代替タンパク質を昆虫食で賄うことを目指して月夜野ファームと東京大学が共同で開発を行う。月夜野ファームは30年以上のコオロギの販売実績があることと、これが重要だが、高品質のフタホシコオロギをずっと生産し続けている。

・フタホシコオロギはネットで簡単に買えるが、月夜野ファームは抜群に活きがよい。なかなか死なない。行動を観察しているが、きちんと使える。

・私の研究はSDGsとは無関係、昆虫が本能的に何を食べるのか、脳神経系的な研究、栄養学的な研究を行ってきた。コオロギが何を食べるのかに関心があった。

・昆虫の祖先は海老やカニの仲間の甲殻類と言われている。それが地球上に上がって、地球上の生物の大体7割から8割が昆虫種と言われている。それほど多様性が生まれている。

・トンボの食性は肉食。チョウチョは草食性だが、進化とともに変わっていくが、なぜ変わるのかが研究テーマ。将来的には蜂が肉食に変わるが、肉食→草食→肉食と進化を経て食性が変わっていく。何が食べたいかというのが変わっていく。そのメカニズムを探る研究を行っていた。

・肉食から草食に変わる雑食性に着目して進化の系譜図を考えると、コオロギ(雑食性)あたりがいいんじゃないかと研究をしていた。実際には脳神経系の仕事をしている。

 

■コオロギは何でも食べる雑食性

 

・コオロギは雑食性であるがために何でも食べる。肉でもサツマイモでもミカンでもゆで卵でもパンでも何でも食べる。高齢化社会になればコオロギとともに一緒に食事もできる。しかもリンリンと鳴いてくれるので寂しくない。愛着も沸くような昆虫種。

・コオロギはまた遺伝子操作やゲノム編集が簡単にできるので有名な種だ。茶色でちょっと気持ち悪いが、これの色を変えることも簡単にできる。遺伝子をいじってあげると真っ黒なコオロギができたり白いコオロギができたりクリーム色のコオロギもできる。味は変わらないが、色は変わる。もしかすると味を変えることもできるかもしれない。

・非常にポテンシャルの高い昆虫種である。月夜野ファームのコオロギパウダーは純国産のコオロギパウダーの生産を目指している。アマゾンをクリックするといくつかの会社で売られている。月夜野ファームはちょっと高い。高いのはなぜかというと国産だから。輸入物は安い。

・口にするときに何を気にするかというと、国産かどうか。30年後にタンパク質として昆虫食として必要になったときに、「国産のコオロギ」が必要ではないか。国産コオロギを大量に飼育していこうと目指している。

・問題点はある。自動化は可能か、生産性を向上できるか、湿度が高いと難しい生育環境をどう改善するか、昆虫には罹らないが人間には罹る病気への対応。衛生面での問題。栄養価の向上。おいしくて栄養分が豊富なコオロギを作れるのではないか。そういったソリューションが必要だと思っている。

・月夜野ファームは生育環境と病気への対応はばっちりだ。生で躍り食いもできるのではないか(これはウソ!)。普通は食べませんが、きれいな環境下で飼育されている。

・月夜野ファームと大量生産を検討している。同社の目標としては繁殖技術を後世に残すと元気バリバリで頑張っている。産業技術の基盤を確立する目標がある。目標30年後かもしれないが、頑張っていきたい。

 

2017年からコオロギだけを使ったお菓子やおつまみを作っているMNH(東京都調布市)

 

■世界では「ミールワーム」が最有力候補

 

・(飼育上の問題点は何か)コオロギは気性が激しい昆虫種。共食いをしたりけんかをしたり成長の差が出てきたり、生まれた数よりも成虫になる率が激減したりする問題がある。これを克服できれば生産性も上がる。大量生産するのは成長過程でのポピュレーションの変化が問題。

・結構手間の掛かるデリケートな昆虫種でマンパワーとスループット(処理能力)の兼ね合いがどうなっているのかが当面の課題かなと思う。

・(食糧としてのコオロギの有用性や将来性については)今の段階でぶっちゃけ「コオロギ食べたいですか」と言われても「食べたくない」のが正直なところ。食べた方何人もして前言撤回する。コオロギはすばらしい代替タンパク質だ。

・小麦粉みたいに「つなぎ」として使えないので、その辺の問題点をどう解決していくか。これはコオロギ屋さんではなく、小麦粉屋さんの問題なんでしょう。この辺を克服できればいい材料になりそう。

・(価格面も・・・)大量生産が整うまではまだ時間がかかりそう。

・(コオロギ以外の昆虫食は・・)日本ではカイコを食用にしようという動きが少々ある。世界的に最有力候補は「ゴミムシダマシ」科の幼虫であるミールワーム(Mealworm)を食用にしようという動きもある。メキシコや南アメリカではこれを食用にしている。見た目は悪いが、中身はしっとりしてクリーミーで結構おいしいのではないか。昆虫が何を食べるかばかり研究していて、昆虫を食べるなんて反逆罪に当たると考えており、私には食べられないが・・・。

 

 

 

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