【映画】政略で結ばれた結婚から夫婦の物語にたどりつくまでの30年間を描いたラブストーリー「レジェンド&バタフライ」

レジェンド&バタフライ(としまえん)

 

作品名:「The LEGEND & BUTTERFLY」
監督:大友啓史
脚本:古沢良太
キャスト:織田信長(木村拓哉)
濃姫(綾瀬はるか)
福富平太郎貞家(伊藤英明)
各務野(かがみの、中谷美紀)
2023年2月6日@ユナイテッド・シネマとしまえん

 

■最低・最悪で出会った2人がいつしか天下統一という夢に

 

政略結婚で結ばれた16歳の織田信長(木村拓哉)と15歳のマムシの娘と呼ばれた濃姫(帰蝶、綾瀬はるか)。格好ばかりの信長と密かに信長暗殺を目論む濃姫の2人の仲は全く気が合わない水と油の関係。

最低・最悪で出会った2人だったが、ある日、濃姫の祖国・美濃が割れて父・斎藤道三が討ち死にする。自身の存在意義を失い自害しようとする彼女に、「お主の役目はわしの妻じゃ」と再び生きる意味と場所を与えたのは他でもない信長だった。

そんな信長もまた、大軍に攻められ窮地に立たされた時、濃姫にだけは弱音を吐く。自暴自棄になる彼を濃姫は鼓舞し、桶狭間の激戦を奇跡的に勝ち抜く。

これをきっかけに2人に芽生えた絆はさらに強くなり、いつしか天下統一という目標ができたことで、2人は夢を見ながら手を取り合う関係になっていく。

しかし、段々と目指すものや背負うものに違いが出て、すれ違いが目立ち始める。現代とは違い時代は死と直結している戦国時代。天下統一のための戦いに明け暮れる中で、信長は非情な”魔王”へと変貌していく。

本当の信長を知る濃姫は、引き止めようと心を砕くが、運命は容赦なく「本能寺の変」へと向かっていく。「魔王」と恐れられた信長と、「蝶」のように自由を求めた濃姫。激動の30年を共に駆け抜けた2人が見ていた本当の夢とは何だったのか。

 

■総製作費20億円のビッグプロジェクト

 

東映創立70周年記念作品である。東映(東京都中央区銀座、資本金117億円)は過去70年間で劇場用映画3445作品を公開し、1958年に第1作を世に送り出したテレビ映画は2707作品、3万5683話になる。

保有するコンテンツを海外などに提供する配信映画は58作品を有するほか、学校教材や交通安全の映像など強みを持つ教育映画も2561作品に上る。「東映チャンネル」の放送タイトル数も3712作品に達した。

手塚治社長は2021年6月1日、「東映はエンターテインメントの創造発信」企業と位置付けている。団塊世代の私にとっても戦後最初の頃の映画界は東映の時代だった。荒々しい波が巨岩に打ち寄せる姿は激しい挑戦を思わせるものだった。

人気ナンバーワンの武将の名にふさわしく、これまで幾度となく映像化されてきた織田信長の人生を、これまでとは全く異なる新たな視点で描いた本作品は織田信長に希代の大スターの木村拓哉を配し、妻・濃姫との30年の軌跡と「本能寺の変」の謎を圧倒的な姿で描き切った。

 

■細部にも目配りした作品

 

各シーンがしっかりとしたセットの中できちんとした役者を配し、丁寧に作られているのが素人が見ていてもよく分かる。細部のこだわり、全体の位置づけにも配慮した作品であることも理解できる。お金がかけられている。

東映は2月5日、公開初日の1月27日から9日間で興行収入10億円を突破したと発表したが、一体どこまで積み上がるのか。総製作費20億円のビッグプロジェクトと宣伝され、希代の名スターの木村拓哉・綾瀬はるかが共演した作品は巨額投資を回収できるのか。

周囲はかまびすしいが、鑑賞者にとってはそんなことはどうでもいい。自分にとってどれだけ感情移入できたかが重要だ。たっぷり感情移入できたのが嬉しい。

 

■信長が唯一すがるものは濃姫だった

 

大友啓史監督はパンフレットに掲載されたスタッフインタビューで、「信長と濃姫、夫婦の話ではあるけれど、要素としては、愛とか恋だけでは成立しない」と指摘。そこから言えるのは「戦国という苛烈な時代に生きていくために、信長と濃姫は男女を超えたパートナーシップを築いた」という。

「その過程で愛が生まれ、成長し、成熟していく物語でもあり、2人の知恵を使って時代を打開していく物語でもある。信長を支えていたのは濃姫であり、ヒントを与えたのも濃姫だった」と述べている。

やがて濃姫は信長に離縁を申し出る。大友監督は「美術の橋本創と相談し、セミナリヨ(神学校)を連想させるような蝋燭で埋め尽くしたシーンにしました。仏門を滅ぼそうとした信長がキリスト教に救いを求めるのは矛盾しているようで理解もできる」という。

「どんな強い人も何かすがるものがないとしんどい。信長にとって神も仏も失った後に、唯一すがるものは濃姫だった。そう考えると、この物語は別にスペシャルな話じゃない。あの織田信長も弱さを抱えて生きていた、ひとりの人間だった」と大友監督は語る。

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