【バラ園】「神代植物公園」で春バラを楽しみ、大温室では青が美しいヒスイカズラや赤バナナと出会い、深大寺そばも味わった無料開園日
■みどりの日で無料入園
5月はバラのシーズン。バラに目覚めたわが家の庭でも咲き始めたが、本格的なバラ園では手入れの行き届いた幾百、幾千ものバラが天候の良さもあって今年はものすごい勢いで咲き始めている。
5月4日はみどりの日。「自然にしたしむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」趣旨で国公立の動物園や公園、植物園などが入園無料になっている。
神代植物公園もその対象だった。そのことに4日朝気が付いて練馬の自宅からバスを2本乗り継ぎ、吉祥寺経由で調布市内の東京都立神代植物公園(じんだいしょくぶつこうえん、東京都調布市深大寺元町)のばら園を楽しんできた。
やはり無料は大きい。偉大だ。この日を楽しみにしている人も多くいるようだ。普段は入園料500円、65歳以上250円。それにしてもただに勝るものはない。
■もともとは苗園
神代植物公園は13年前に一度行っている。その時は車で、生まれて間もない初孫と母親連れだった。植物園は「神代」(じんだい)なのに、地元地名は「深大寺」(じんだいじ)となっており、頭の中が混乱したことを覚えている。
この公園はもともと、東京都の街路樹などを育てるための苗園だったが、戦後、神代緑地として公開されたあと、昭和36年(1961)に名称も「神代植物公園」と改め、都内唯一の植物公園として開園された。
現在、約4800種類、10万本・株の樹木が植えられている。園内はばら園以外にも、ダリア園、ぼたん・しゃくやく園、しゃくなげ園、つつじ園、うめ園、はぎ園、つばき・さざんか園など、植物の種類ごとに30ブロックに分かれており、景色を眺めながら植物の知識を得ることができるようになっている。
■いわば広大な森林公園
敷地面積は50万平方メートル。代々木公園よりやや狭いものの、雑木林なども配され、いわば広大な森林公園となっている。
園内には小川も配置され、せせらぎも楽しめる。この日は無料公開日で大勢の人が詰めかけていたが、ばら園以外はそれほど圧迫感もなく、のんびり散策を楽しめた。
アクセスは京王線つつじヶ丘駅や調布駅、吉祥寺駅、三鷹駅から大体20分ほどのところだが、いずれもバスが出ている。この日は臨時バスも運行されており、係員の誘導も手慣れたものだった。
帰路は吉祥寺経由を敬遠して、京王線つつじヶ丘・新宿経由で帰宅したのが正解だった。
平成23年(2011)に開園50周年を迎えた神代植物公園の記念事業の一環で、神代植物公園にちなんで名前を付けたバラ。
平成21年度の国際ばら新品種コンクール(JRC)の金賞受賞花に作出者の了解を得た上で、公募により名前を付けたもの。
「気品にあふれ、香りも高い深紅のバラで、まさに神代植物公園のクイーン(女王)の名にふさわしいバラ」とされている。
1960年、寺西菊雄氏作出の天津乙女。同氏はイタミ・ローズガーデン2代目園主で日本を代表するバラの育種家。京阪園芸の岡本勘治郎氏と並び関西を代表している。日本の作出花で、初めて世界的な評価を得た記念すべき品種。大輪イエロー系の四季咲き性大輪種(HT)。
花型は剣弁高芯咲きで花色はオレンジ色のぼかしの混じるイエロー。咲き進むと花弁の先からクリーム色に退色する。
天津乙女は宝塚月組のトップスターにちなんだもの。
1967年フランス。メイアン。フランスでマジョレットはバトンガールを意味する。神代植物公園では毎シーズン、他の品種に先駆けるように咲き出している。早咲らしい。
蕾のうちは焦げたようなオレンジ色で、開くとパステル調のオレンジ色になる。しかし咲き進むうちに色が淡くなり、サーモンピンクがかってくる。
春の花はオレンジが強く、秋の花はピンクが強い。
■バラの魅力は花の美しさと香り
この日は快晴。昼近くには気温はグングン上がり体感では30度近かった。日差しがあまりにきつく、肌が痛い。人間でさえこうなので、バラにはきつかったに違いない。
恒例の「春のバラフェスタ」は5月9日から28日までだが、既に満開状態。予想より2週間ほど早い開花のようで、果たして会期末まで花が持つか関係者はやきもきしていることだろう。
バラは5000万年以上前から地球上に存在していたとされ、現在、野生種は北半球にのみ分布し、150種ほどあると言われている。
中近東やヨーロッパでは紀元前から香料や薬用として人々の生活と深い関わりがあり、現在では世界中で最も愛されている花の1つで、2万以上の品種があるとも言われている。
バラは落葉性の低木で、樹形は主に「ブッシュ」(木立性)、「シュラブ」(半つる性)、「クライミング」(つる性)などに大別される。
花の開花時期は、種・品種により、春から晩秋にかかて咲き続ける「四季咲き」、春から初夏に香かて年1回開花する「一季咲き」、春から初夏にかかて開花後繰り返し花数を減らしながら咲く「返り咲き」などがある。
バラの魅力は花形、花色、花弁などの美しさと香りにある。ジャスミン、スズランと並んで「3大花香」とされ、”香りの女王”とも言われている。
■世界で最も幹が太くなる植物
敷地内に全面ガラス張りの大温室がある。そこには熱帯花木室、ラン室、ベコニア室などのエリアがある。ちょっとそこらでは見掛けない花が咲き乱れている。
面白いのはアフリカ特有のバオバブの木。若かれし頃セネガルに行ったときに目にした記憶が残っている。アフリカ大陸を原産地とする落葉高木。世界で最も幹が太くなる植物といわれる。バオバブの仲間には12種類が知られており、アフリカ、マダガスカル、インド、オーストラリアに分布している。
文献によれば、アフリカバオバブでは幹の直径6~10m、樹高が20mを超えるものもあり、樹齢5000年以上になる木もあるという。セネガルの言葉ではバオバブは「1000年の木」という意味だといわれる。
有用樹木として知られるバオバブは葉にタンパク質を多く含み、野菜や保存食に利用され、果実はビタミンCが豊富で生食やジュースの材料に利用されるほか、樹皮を剥いで家の壁を作ることもある。
食用や薬用、資材などさまざまな活用法があるので、「宝の木」とも呼ばれている。
バオバブは、サン・テグジュペリの『星の王子さま』に出てくる木として有名になった。「まめに芽を抜かないと、バオバブが巨大化して星を荒らしてしまう」と恐れられていたというエピソードでバオバブの名前が広まったという。
■青が美しい!「ヒスイカズラ」
マメ科のつる性植物でフィリピンのルソン島が自生地のヒスイカズラ。現地ではオオコウモリが蜜を吸い、受粉を助けるという。フジの花を大きくしたような花序は、長さが60センチくらいになる。
また、植物には珍しい「青碧色」(せいへきしょく)の花を咲かせる。花色が宝石の「翡翠」(ひすい)に似ていることから、この名前が付いた。
花期は2月中旬から6月下旬。花数が多いのは3月。
■カラーが個性的で人気
■品種改良と染色の2パターン
白が定番というイメージの強い胡蝶蘭だが、近年ではピンク、黄、緑、青、赤、紫など、さまざまな色をした胡蝶蘭が販売されている。
カラー胡蝶蘭は、近年になってから誕生した比較的新しい胡蝶蘭。製法には「品種改良」と「染色」の2パターンがあり、それぞれ色の出方や展開に特徴が出る。
品種改良によって誕生したカラー胡蝶蘭は花びら全体に、濃淡なく鮮やかな色が広がっているのが特徴。ピンクや黄色に多い。染色技術で生まれたカラー胡蝶蘭は特殊な技術で染色液を吸い上げさせて花を染めているので、花びらにある葉脈に沿って色が出ているのが特徴。
青や紫に多い。株によっては染ムラが起こることもある。
■花が美しい「花ベゴニア」
シュウカイドウ科ベゴニア属の植物で、熱帯から亜熱帯にかけて2000を超える種が分布している。非常に変異が多く、多数の園芸種がある。
木立性ベゴニア(茎が直立し、地下に球根や茎のかたまりを作らないもの)、根茎性ベゴニア(地面をはって伸びる茎=根茎を持つもの)、球根性ベゴニア(茎のかたまりや球根を作り、茎が直立するもの)の3つに大別される。
またベゴニアの中でも花が美しいものは「花ベゴニア」と呼ばれ、「冬咲きベゴニア」「エラティオールベゴニア」「球根ベゴニア」「四季咲きベゴニア」の4グループに分けられている。
■赤いバナナは高級品
フィリピンなどで栽培されている生食用のバナナの品種で、皮が赤茶色をしており、「モラードバナナ」とも呼ばれている。モラード(Morade)とはスペイン語で紫色を意味する。
バナナは木のイメージがあるが、幹のように見える太い部分は葉の一部。これを偽茎といい、内部に多数の丸まった葉が入っている。またバナナの茎は球形状で、地下にある。
黄色いバナナには旬がないため1年中出回っているが、赤いバナナは2年に1回しか収穫できないため、輸入量が少なく日本でも少し高い値段で販売されているようだ。
原産地はフィリピン以外に台湾、東アフリカ、南アメリカ、アラブ首長国連邦など。バナナの栽培が盛んな台湾やフィリピンでも希少価値の高い品種として扱われ、ほかの品種よりも高い値段で取引されることが多い。
■世界最大の臭い花!
インドネシアのスマトラ島だけに生育するサトイモ科の希少植物(絶滅危惧種)。高さ3m、直径1m以上にもなる大きな花序を咲かせる。
「世界で一番大きな花(花序)」と言われており、腐った肉のような強烈な悪臭を放つことで有名だという。
地下に大きな芋(球茎)があり、そこから1枚の大きな葉を出して栄養を蓄えることを数年繰り返し、球茎が十分に大きくなると花芽を付け、花を咲かせるといわれる。
■サボテンの王様「金鯱」
一番奥にあるのがゴールデンバレルカクタス(英名)。日本では別名「金鯱」(キンシャチ)の愛称で慕われている。「サボテンの王様。やっぱり迫力がすごい!でもまん丸くて可愛い❤︎」というコメントを見つけた。
メキシコやアメリカ南西部原産の乾燥を好む植物だ。コロンとした丸みと黄金色のトゲが特徴的で、老若男女を問わず人気のサボテン。
個性的な特徴を持つ姿からドライガーデンやロックガーデンに取り入れる人も多く、「短棘金鯱」「長棘金鯱」のほか、白いトゲを持つ「白棘金鯱」など多種多様なトゲを持つ個体もあるという。
金鯱の最長寿命は30年程度といわれる。実は絶滅危惧種の「絶滅寸前」に指定されている。
■まずは蕎麦だんごを!
ほどよく疲れて深大寺門を出て坂道を降りてくると、小さな横丁にずらっとそば屋が軒を並べていた。お腹も空いてそばを食べる前に「一休庵」でまずは蕎麦だんごをいただいた。
私と上さんでみたらしとごまを2本ずつ。横のベンチに座っていただいた。だんごがそばの味がしておいしかった。蕎麦を食べる前なので1本にしとけば良かったなと思ったがあとの祭りだった。
十割手打ちそばがお勧めの一休庵は長い行列ができていた。入ったのは「門前」。こちらも並んでいたが、座って並ぶ形だった。少し並んでむぎとろろ蕎麦をいただいた。
■深大寺は浅草寺に次ぐ古刹
「深大寺(じんだいじ)」(東京都調布市深大寺)は何で有名か。深大寺蕎麦と植物公園ぐらいは知っていたが、深大寺がそんなに古い古刹であるとは思わなかった。名物集めの一環で「有名らしい」お寺をこしらえた、ぐらいにしか思っていなかった。
ところがどっこいである。どうやら「深大寺」は浅草浅草寺に次ぐ名刹であるらしい。東日本最古の仏である「釈迦如来像」を有していることが分かった。ただそれが「国宝」と認定されたのが2017年9月のこと。大体の人はそんなこと知らない。
深大寺蕎麦は知っていた。深大寺周辺には複数の湧き水があり、その豊富な湧き水が蕎麦の栽培に適していたこと、水車を利用して製粉ができたことで、蕎麦が有名になったのだという。
毎年3月3日~4日に行われる厄除け元三大師(がんざんだいし)大祭では、境内にだるま店を中心とした露店が約300店並び、日本3大だるま市(調布の深大寺だるま市、富士のだるま市、高崎だるま市)として名高い。