【出張報告】eチケットを初めて買って仙台へ自腹出張=「十四代」を飲みセキュリティエレベーターを経験しさらには防災トイレを勉強した2日間

やまびこ61号盛岡行

 

■列車事情を知るためにもたまには乗車を

 

最近は大阪や東北に行く場合も車が主で、ぐんと近間の長野県軽井沢なども車で行っている。いずれもプライベートの旅行が中心だ。

それが今回、久しぶりに仙台に出張した。出張と言っても全額自費で、経費はフリージャーナリストとして自弁である。3年前に長野市へ自費出張したときは高速バスを利用した。

しかし今回、たまには電車も利用しておかないと、事情がよく分からず戸惑う「浦島太郎」になりかねないことを身をもって体験した。電車事情がガラッと変わってしまったからだ。

今回は日本トイレット協会主催の「防災トイレフォーラム」に参加するため宮城県東松島市に出張したが、東北新幹線に乗るのも初めての上、チケットレスも初経験で、何もかも初ぐるみだった。

 

やってきました仙台駅!

 

■チケットレスで仙台まで

 

JR東日本・JR北海道のインターネット予約サービス「えきねっと」を使うのも初めて。何事も経験だと思っていたが、「はやぶさ」と「やまびこ」の区別も分からず、あとから考えるに相当無駄なことをしたと思う。

割引き切符を買ったつもりにもかかわらず、うまく買えておらず、結果的に余計なお金を使うことになった。要は途中で何が何だか分からなくなってしまったのである。ネットではよくあることだ。

現在の東北新幹線では看板列車の「はやぶさ」(最高時速320キロ)とそれに次ぐ「やまびこ」(同275キロ)が走っている。「はやて」と「なすの」も走っているが、どうも本数は多くなさそう。

新幹線eチケットサービスとは何か?「乗車券・特急券」がセットの限定商品で、指定席が一律200円オフ!だという。切符を受け取ることなく、新幹線eチケットに紐づけた交通系ICカー(Suica,PASMO)などを自動改札機にタッチするだけで、そのままJR東日本の新幹線に乗車できるサービスだ。

事前にPASMOをえきねっとに会員登録しておく必要があるものの、一度そうしておけば、あとはタッチするだけでチケットなしでも新幹線にも乗れるのだ。それを知らない自分は時代遅れもいいとこかもしれない。

新幹線はこれまでもっぱら東海道新幹線を利用していたが、それらはどれも切符を買ってから乗り込んでいた。それが当たり前だった。ところがそうでなくなっているのだ。

自分では最先端の技術に応じた乗車方法を駆使していたはずなのに、いつのまにか最も遅くなり果ててしまった。生きていく世の中のシステムが変わってしまって、もう生きていけなくなった感じだ。人生の競争に敗北した思いである。

 

エレベータもセキュリティ時代に

 

■セキュリティはエレベーターにまで

 

仙台で泊まったのはアパホテルだった。同市内にはいくつかあるらしいが、TKP仙台駅北。本当はフォーラムが開催される東松島市に泊まりたかったが、仙台で会いたい人がいた関係上、仙台前泊を決めた。

後から考えれば「はやぶさ」に乗るなら東京-仙台間1時間30分だ。十分日帰りが可能なエリアだった。それが知らないもので、前泊までして万全を期したが、そんな必要はさらさらなかった。

いずれにしてもアパホテルに泊まったが、またエレベーターに乗って行く先階を推しても動かないのだ。変に思ってよく見たら「宿泊者の方は、カードキーをかざしてからボタンを押してください」と注意書きがしてあった。

「セキュリティエレベーター」と呼ぶそうである。「セキュリティエレベーター」と書かれた下にパネルがあってそれを押せと言っている。それにタッチしないと行き先階のボタンが押せないのだ。

宿泊者以外の人間が客室階にいけないようエレベーターにセキュリティが掛かっているのだ。そのセキュリティは宿泊中の客のルームキーでしか解除できない仕組みになっているのだ。

昔のエレベーターは自由に客室に行くことができた。それが便利だったし、それが普通だと思っていたが、エレベーターのセキュリティは進化してルームキーがなければ自分の部屋にも行けない。セキュリティ重視の時代である。

アパホテルはまだルームキーがあるものの、従来の物理的なキーを使わない「完全キーレス化」という方法も出現しているという。カードの代わりに宿泊者ごとに発行する「暗証番号」を活用するものだが、こちらはコスト的な問題があるようだ。

 

一四代(山形)中取り純米吟醸龍の落とし子グラス2400円

 

■幻の酒「十四代」を味わう

 

仙台で久しぶりに会ったのは昔、ウィーンで石油輸出機構(OPEC)総会が開かれていたとき以来付き合っているエネルギー業界関係者。今は会社の社長、会長を勤め上げて今年6月から相談役になった人物だ。

彼が連れて行ってくれたのは接待も可能な雰囲気の個室和風ダイニング「桃水」(とうすい、青葉区国分町)。彼は小料理屋と言っていた。東北地方の銘酒と素材を活かした和食が充実している店だ。

そこで飲んだ酒が「十四代」だ。醸造元は高木酒造(山形県村山市)。「十四代は日本酒の中でも最高峰で幻と呼ばれるほど希少な品として扱われているブランド」(お酒買取専門店リンクサス)。名前は聞いていたが、飲んだことはない。

「時代が端麗辛口が主流となっているときに、うま口の酒を造り出した。ある写真家が密着して、その写真集を出したことも手伝って市場で売れ始め、居酒屋さんでは『十四代あります』の張り紙がでるほどに」(由紀の酒)なったという。芳醇旨口を代表するお酒。

卓抜したブランディング戦略と少量生産が希少価値を演出した。今回飲んだのは純米吟醸竜の落とし子を吟選グラス1杯(2400円)。こぼすともったいないので口をそっと付けていただいた。考えてみればびっくりするような値段である。

きりっとした端麗辛口ではなく、むしろ甘口のようなフルーティな感じ。難しい味ではない。どちらかというと、万人受けする味わいだ。冷やでぐいっとやったら酒飲みではない私にとっても実にうまかった。

問題は十四代は日本酒の中でもとびきり高いのだ。「それはズバリ。幻の日本酒としてプレミアムがついているから」(お酒買取専門店リンクサス)だという。「元値そのものが高いというのではなく、販売価格が上乗せされて高い値段になっているのが現状」(同上)らしい。

酒米の育種を行っており、「酒未来」「龍の落とし子」「羽州誉」の3種の酒米を開発したのも特筆される。いまや酒造りはすさまじい杜氏の技術と経験を活用した作品作りの場になっている。作り方が完全に昔と異なっているのだ。

 

目をこちらに向けた伊勢エビ

 

■気高さすら感じる伊勢エビ

 

「武将の甲冑を思わせる豪快な姿に、気高さすら感じる鮮やかな赤ーー慶事の席に欠かせない高級食材・伊勢エビは、刺身よし・焼き物よし、どのような料理でもおいしさを堪能できる王道の食材」(海と魚がもっと好きになるウェブマガジンumito.

人を睨みつけるような眼差しの伊勢エビは初めてだった。小料理屋でこんな立派な伊勢エビと対面するとは思ってもみなかった。それを食べるとなると、こちらも結構覚悟がいるものだ。

伊勢エビは浅い海に生息する大型のエビで、日本では高級食材として珍重される。現在スーパーなどで販売されているのは天然物ばかり。養殖にも成功しているものの、まだ販売できるまでには至っていない。

伊勢エビの名産地は三重県で全国1位。次いで千葉県、和歌山県と続く。「伊勢海老の漁獲量TOP10(2016年)」統計によると、上位3県で全国の約半分もの漁獲をしている。

伊勢エビが養殖しにくいのは幼少期が約300日と長すぎることが大きな理由らしい。また最適なエサが判明していないともいわれる。要は養殖するにはまだコストが掛かりすぎというわけだ。

コリコリした歯ごたえのある身は引き締まっていて、実においしかった。十四代を隣に置いて伊勢エビを食べるぜいたくはなかなか味わえるものではない。

 

AKABU

 

■3.11の被災蔵が立ち上げた新ブランド「AKABU」

 

赤武酒造は、三陸海岸沿いの岩手県大槌町で1983年創業の歴史をもつ。代表銘柄「浜娘」の醸造元として知られるが、蔵は2011年の東日本大震災で津波にのまれて流失。被災蔵として、ゼロからの出発を余儀なくされる。

蔵が再建されたのは2年後の2013年。大槌町から盛岡市内に移転。次期蔵元の長男・古館龍之助氏が立ち上げたのが新ブランド「AKABU」だった。

定番の中心は「結の香」「吟ぎんが」に代表される岩手県産米使用の特定名称酒。みずみずしい果実香、軟水仕込みならではの柔らかなタッチに誘われ、すいすいと杯が進む。

 

千石線矢本駅

 

矢本駅頭

 

■矢本は義経由来の地名

 

防災トイレフォーラムは宮城県東松島市矢本の東松島市コミュニティセンターで開催されたが、仙台寄りの松島町には東日本大震災の頃に一度来たことがある。3.11から2カ月後の5月6日のことだ。観光支援のつもりだった。

奥松島に車を走らせると、津波に襲われた目を覆わんばかりの姿を目にした。すさましいまでの津波の破壊力を見せつけられ茫然自失。言葉を失った。

松島海岸で動き始めた遊覧船に乗ったが、ガイドによると日本三景の1つの松島を構成する島々が防波堤となって意外と被害が少なかったという。遊覧船に乗ってもらえるのも被災地復興の一歩で嬉しいとガイドは言っていたことを思い出す。

矢本駅は仙石東北線の駅で、仙台駅から快速で40分ほど。通勤圏だ。さみしい駅だが、矢本の地名は、源義経が岩手・平泉で自刃する際に、愛鷹8羽を解き放ち、それが矢本の滝山公園辺りに飛来したことに由来するという。

 

びっくりするほど広い東松島市コミュニティセンター

 

■ブルーインパルスの本拠地とは知らなかった!

 

野外に展示されているマンホールトイレを見たあと、ベンチでくつろいでいたら、バリバリバリとものすごい音がしてびっくりした。つい頭に「航空機騒音」の言葉がもたげた。

東松島市には航空自衛隊松島基地(宮城県東松島市)があり、矢本駅は聖地松島の玄関口に当たるという。同基地は日本各地で華麗なアクロバット飛行(展示飛行)を行う専門チームのブルーインパルスが本拠地を置いている。

ブルーインパルスのアクロバット飛行はいろんなところで見たことがあるが、そのブルーインパルスの拠点に来ていることを知らなかった。頭に思い浮かばなかった。爆音を実際に聞いて初めて知った。

「松島基地航空祭」が今年も8月27日(日)に行われ、千石線でも臨時列車が運転される人気イベントとなっている。東京では航空騒音を発生する航空施設はむしろ「迷惑施設」だが、東松島市では地元住民の生活にどうやら密着しているように思えた。

 

ランチを食べに歩いているうちに出会った朝顔

 

いつの間にか夕闇が迫った矢本駅ホーム

 

■塩釜駅でトイレ下車

 

防災フォーラムも無事終って矢本駅まで歩いて戻ったら、西の空はまだ明るさを残していた。そう言えば今夜(9月29日)は中秋の名月。旧暦の8月15日の夜(十五夜)に見える月をそう呼んでいる。

そんなことを思い出し空を眺めたが、東北の空は曇りがちでお月さんは顔を出していなかった。それで快速仙台行きの座席に座ってのんびりするつもりでいたら、急にトイレに行きたくなった。

列車にはトイレが完備されていたが、鍵がかかっていて開きそうになかった。そんなはずはないのと思いつつも、大の大人がトイレの開け方を聞くのも恥ずかしく3両編成の車中をウロウロ。とうとう我慢できなくなり、途中の塩釜駅で下車。速攻でトイレに駆け込んだ。

それでも仙台駅では予約している新幹線までにはまだ1時間も余裕があった。もう少し早い電車に切り替えようと思って切符売り場に行ったが、どれも満席と言われ、「予約されている電車に乗られたほうがいいですよ」とやんわり断られた。

75歳の大人にしてはあまりにも落ち着きがないのはどうしてなのか。本来は落ち着きがあって然るべき年齢なのにそうではなくなっている。自信を持って自分のことを処理できなくなってきている。

そんな自分が自然と周りにも反映するのだろう。単に歳を取るということは落ち付きが増すということでもない。むしろ落ち着きを失うことになるのかもしれないと考えた。歳を取るということは恐ろしいことだ。

 

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