”元気な”防衛庁
「今年は酉(とり)年。何とか鶏に、大きな声で防衛省!と鳴いてもらって、省に昇格したい」と悲願を口にするのは大野功統防衛庁長官。1月14日、日本記者クラブで開かれた昼食会でのこと。「なぜ防衛庁なのか。『庁』は専門分野、特定分野で実務的な仕事をするところ。防衛の仕事とは国全体を守る仕事。国家機関と言ってもいいくらいだ。国をトータルに預かるものがエージェンシー(庁)でいいのか」と鼻息が荒い。
このところの防衛庁はイケイケドンドンである。2004年9月27日に大野長官が就任してわずか3ヵ月で、イラクへの自衛隊派遣延長、新防衛大綱の決定と大仕事を仕上げて、今は米軍再編問題に取り組んでいる。中国の原子力潜水艦の領海侵犯問題への対応や、スマトラ沖大地震・インド洋大津波への国際緊急援助活動など大車輪の活躍ぶりだ。
防衛庁のプレゼンスが一気に高まった背景には世界の安全保障をめぐる環境が激変したことが大きく影響している。その象徴が2001年9月11日に起こった米同時テロ。それまでの国と国との脅威から、多彩な脅威に対処しなければならなくなり、どうしても国際協力が重要になってくるからだ。
この結果、必然的に生じてくるのが防衛と外交の一体化。「一体化と言えば、誤解を招くので、境界線がなくなってきた、と言っている。外交と防衛のいずれも平和をつくるという面で防衛の役割を大きくしていく。外国へ行っても、弾(たま)を撃たない。そういう世界の中で平和を構築していく」(大野長官)。時代の要請とはいえ、防衛庁があまりに”元気”になる世界は決して手放しでは喜べない。