築地の料亭

 日本料理で名高い「つきじ植むら本店」(東京都中央区築地1-13-10)に行った。ある会合のためだ。この店は昭和3年創業の老舗料亭として名を馳せている。名前だけは知っていたが、足を踏み入れたのは初めて。”話”が主役だったから、残念ながら、何を食べたかよく覚えていない。確か、刺身の器に、桃の花が添えられていた。覚えているのはそのくらいで、まことに情けない。

 築地には料亭が多い。大川(隅田川)沿いに料亭文化が花開いたらしい。最も有名なのは「吉兆」か。どうも格式が違うらしい。ほかにも「新ばし金田中」や「つきじ治作」、「つきじ田村」(正しくは「じ」ではなく「ち」に濁点)などがある。ひっそりとしたたたずまいながら、小泉首相も使う「松山」など、意外なところに歴史も由緒もある老舗が息を潜めている。

 「玄関の花一輪、屏風、控えの間に通ったときに聞くひそやかなお香。たばこ盆とお茶にて友を待ち、本席に至りては時季の料理と芸妓の舞。その傍らの床の間にてひっそりと覗く軸と花。日本人が創り出した当たり前の空間と演出。そんな場所が料亭です」(金田中HPサイト)。

 銀座の住人になってはや1年5ヵ月。朝昼夜、必要に迫られて、ウロウロするだけで、その中に息づく空気は窺い知れないが、いつも気になる存在ではある料亭。今宵もそこで、何ごとかが決まっているのだろうか。

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