双日、LME銅・アルミ先物取引で180億円損失
双日ホールディングス(HD)は3月9日、傘下の大手商社、双日のエネルギー・金属資源部門が行っているコモディティー取引で約160億円の損失が発生したと発表した。翌10日には、損失を招いたのはロンドン金属取引所(LME)での銅地金およびアルミ地金の先物取引によるもので、すべてのポジションの最終処分を行った結果、最終損失額は179億8700万円に確定したと追加発表した。
双日HDは今回の損失発生について、「社内のリスク管理体制で重大なルール違反があった可能性がある」としており、社外弁護士の黒田泰行氏(大江黒田法律事務所所属)を委員長とする「事故調査委員会」を発足させ、全容解明に乗り出した。
双日HD(旧ニチメンと旧日商岩井が合併して2003年4月誕生)は現在経営再建中で、「リスク管理の強化・高度化」に取り組んでいる最中での事故。「追加損失は発生しない」と説明しているものの、「全社を挙げてリスク管理体制の再点検と再構築」を余儀なくされ、さまざまな面で影響が出てくるのは避けられない。
LME市場での損失と聞いて、すぐ思い出すのが1996年に発覚した住友商事銅不正取引事件。住商の非鉄金属部長だった浜中泰男氏が銅の簿外取引で会社に2852億円の巨額の特別損失を負わせた、あまりにも有名な事件。浜中氏には東京地裁で懲役8年の実刑が確定した。
今回は銅とアルミのそれぞれの部署が取引を担当しており、社内ルールに抵触する取引が行われたようだ。詳細は調査委員会の調査に待たなければならないが、リスクを管理することの難しさは昔も今も変わらない。取引内容がデリバティブを駆使した一段と高度なものに進化しているだけに、リスク管理はむしろ、難しくなっているかもしれない。
利益が上がっているのならともかく、損失を出すことは許されないのが相場の世界。恐らく、思わぬ相場変動で小さな損失を生じ、それを取り返すべくして行った取引が裏目に出て損失が拡大、どうにもならなくなったのではないか。「損切り」することの難しさは言うまでもない。こういう話を聞くと、胸が痛くなる。