『クルード』

 オーストラリアのリチャード・スミス監督が2007年に製作したドキュメンタリー作品。クルード・オイル、即ち原油の歴史および将来に迫った。副題は「the Incredible Journey of Oil」だが、日本語では「むき出しの欲望の果て」とセンセーショナルに意訳されていた。

 今や生活を営む上で欠かせない存在にのし上がった原油。それなのに、原油がどこから来たのか、いつ尽きるのか、我々をどこへ駆り立てるのか。実は誰もよく知らない。この原油の正体に迫ったのがこの作品だ。

 世界最大の産油国、アラビア半島。1億6000万年前のアラビア半島は陸地では肉食獣が歩き回り、海では古代魚が繁殖する温室環境に支配されていた。炭素は海の中に埋もれ、閉じ込められていたが、人間が炭素を封じ込めた頁岩層から原油を見つけたがために、状況は一変。

 原油の使途は無限に拡大し、その消費スピードも急激に加速。それに伴い、炭素が地球上に拡散、温暖化に弾みが付いた。誰も止められない。今の地球はかつて恐竜の生きた時代に向けて猛スピードで回帰しているところだ。

 底知れない原油消費の結果、行き着く世界は原油生成過程への逆戻りそのものではないか。これほどの皮肉はあるまい。見終わってため息をつくしかない作品だった。アースビジョン第16回地球環境映像祭のアースビジョン大賞受賞作品。主催は千代田区のCES推進協議会。場所は法政大学市ヶ谷キャンパス。 

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