「日本でいちばん大切にしたい会社」

 主に学校で使われる粉の飛びにくいチョークの生産で国内シェア30%を占める「日本理化学工業」(本社・神奈川県川崎市)の大山泰弘氏(76)の話を聞いた。13日(土)、法政大学市ヶ谷キャンパス。

 同社は資本金2000万円、従業員74人の間違いなく小さな企業だが、驚くべきは74人のうち55人は知的障害者、しかも重度の人が半数以上を占めているという。 それでいてチョークの生産シェアは日本1。

 きっかけは1959年(昭和34年)の秋。会社の近くにある養護学校の女性教諭から障害を持つ2人の少女を採用して欲しいと依頼され、2度断りながら、3度目に1週間の体験就業を受け入れ、最後の日、「私たちみんなでカバーしますから」との社員の総意を入れて採用に踏み切った。その経過を大山会長は淡々と話した。

 採用してからも、「会社で毎日働くよりも、施設でゆっくり、のんびり暮らすほうが幸せなのではないか」との思いが消えないまま、あるとき法事の席で一緒になった禅寺のお坊さんにその疑問を尋ねた。

 帰ってきた答えが「そんなこと当たり前でしょう。幸福とは①人に愛されること②人にほめられること③人の役に立つこと、そして④人に必要とされることです。このうち、最後の3つの幸福は施設では得られないでしょう。働くことによって得られるのです」。

 大山さんは「人間にとって生きるとは必要とされて働き、それによって自分で稼いで自立すること」だと気づいたという。そういう場を提供することが自分にできることだとの考えに到達した。これが障害者を雇用し続ける決意を促したという。

 講演に先立ってあいさつした法政大学大学院の坂本光司教授によれば、会社経営とは「5人を幸せにするための活動」。その5人とは①社員とその家族②外注先・下請け企業の社員③顧客④地域社会⑤株主。会社=株主という考え方が支配的な世界とは全く異なる。

 坂本教授は「6000社以上の会社をアドバイスしてきたが、これほどの感動、感嘆、感銘を受けた会社はない」と述べていた。『日本でいちばん大切にしたい会社たち』(あさ出版)を今年出版。とてもいい話でした。日本もそんなに捨てたもんじゃないです。

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