堺屋太一『凄い時代』

著者:堺屋太一
書名:『凄い時代 勝負は2011年』
出版:講談社、2009年9月1日

 つい先ほど、台風18号が愛知県知多半島に上陸した。日本本土上陸は2年ぶり。東京に影響が出るのもまもなくだ。強い雨の音で目覚めたのは午前3時すぎ。それからしばらく雨はおさまっていたが、6時を過ぎてまた強まり始めた。通勤が心配だ。

 1年前は「大昔」、2年先は「全く新しい世の中」になるという「凄い(すごい)時代」。1年前の洞爺湖サミットではインフレ対策と環境問題を話し合っていたのに、今年のラクイラ・サミットのテーマは国際金融の立て直しと世界大不況対策。まさに様変わりで、文字通り「凄い時代」である。

 なぜそうなのか、と著者は問う。そして、「今次の不況が巨大な文明の転換に起因しているからだ」と答える。「物財の豊かさが人間の幸せという近代思想が失われ、満足の大きさこそ人間の幸せという知価社会的発想が広まった。これに対して、中国を中心とする東アジアには、近代工業社会の思想と体制が確立した。この文明的なずれこそが、世界経済の凸凹構造の基盤である」

本来なら、この文明的なずれが大地震を引き起こして、世界は崩壊したかもしれない。しかし、そうならなかった。少なくても、今はそうなっていない。なぜか。「この凸凹構造が維持できたのは、ドルを機軸通貨とするペーパーマネー体制があったからだ。赤字垂れ流しでも、ドルの地位と価値を保ったのは、借り手が存在したからである。アメリカ金融界は、様々な借り手を創り出した。その究極がサブプライム・ローンだった」。

 しかし、ここにきてサブプライム問題が爆発し、世界は大混乱に陥った。世界は財政垂れ流しの不況対策を総動員し、何とか金融大破綻を回避できたものの、生命維持装置のカテーテルを外すときには衝撃を覚悟しなければならない。そのときは世界不況の「二番底」が来るという。必ず、来るという。

 東アジアで急速に進む高学歴化と晩婚少子化は近代工業社会からの決別を促し、既に出生率の増加が始まったアメリカでは知価革命が進むことによって、いずれは凸凹構造が緩和されるようにはなる。しかし、そうなるのはずっと先のこと。それまでは、世界はこうした状況の中で再生を図らなければならない。

 だから「凄い時代」が続く、と著者は指摘する。そして、「変革は機会を与える。凄い時代こそおもしろい。これを活かすには、5つの条件がいる」。

第1は気質。変化を歓び、改革を好む気質。
第2はアイデア。これから重要なのはビジネス・モデルだ。
第3は先見。成長分野を嗅ぎつける感覚と将来を見通す予測能力である。
第4は勇気。自らを信じて撃って出る決断力である。
第5は、少しばかりの幸運だろう。

 

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