vagabond

東京・新宿西口の『バガボンド』は不思議な店である。次から次へと慌しく開いては閉じていく店が圧倒的に多い新宿の中で、まるで時間が止まったかのように、昔の姿を頑なに守っているようだ。もう何十年も前からあるのは知っていたが、立ち寄るきっかけがなかった。
この日、『ぼるが』で飲んで外に出ると、少し薄暗いネオンが灯る入口に立つバーテンダー氏とおぼしき人物。目線が合って、少し話すと、「ぼるがさんには及びませんが、うちも店を始めて33年です」。歴史には一目置くのが流儀だ。中から聞こえてくるのはジャズの音だから、なおさらである。
吸い込まれるように2階に上がった。BARは1階で、2階は居酒屋。しかし、その居酒屋で生のジャズが演奏されていた。花金で狭い店内には人が溢れていたが、不思議とくつろげる空間である。神戸のSONEを思い出していた。