イチョウ並木と南北朝鮮砲撃戦

 勤労感謝の日で祭日。朝方は小雨が残っていたので午前中は自宅で待機し、のんびり過ごした。午後晴れたので外出。買い物している最中の15時16分に携帯電話がメールを受信した。「韓国のYTNテレビによると、同国の島に北朝鮮の砲弾が着弾し、負傷者の出ている(ソウルAFP時事)」のフラッシュだった。

 次いで15時28分には「韓国合同参謀本部によると、北朝鮮が韓国西方沖の島に向けて数十発の砲弾を発射。韓国軍は対応射撃を行っている。YTNテレビによると、島では北朝鮮の砲弾により60~70軒の家屋が炎上(ソウル時事)」との続報が入った。

 昔なら、一報を受けた時点で、職場に向かったものだが、今や現役を離れた身。気になったが、そのまま買い物を続け、その後見事に紅葉したイチョウを眺めながら、図書館で借りていた本を返却。自宅に戻ってテレビを付けると、NHKは大相撲中継を続けていた。のんびりした国営放送局だ。

 民放はしっかりLIVE映像を流していた。ニュース番組の時間帯だったのかもしれないが、この日ばかりは民放、特にテレビ朝日の報道に拍手した。NHKは5時のニュースで報じたが、緊迫感は伝わってこなかった。


              (NHKニュースウオッチ9から)

 韓国合同参謀本部によると、北朝鮮は23日午後2時30分ごろ、韓国が黄海上の軍事境界線と定める北方限界線(NLL)に近い韓国西方沖の延坪(ヨンピョン)島に数十発の砲弾を撃ち込んだ。韓国軍が反撃し、南北間で砲撃戦に発展し、韓国軍海兵隊員2人が死亡したほか、隊員15人が重軽傷を負った。

 北朝鮮側は約2時間にわたり断続的に砲弾約80発を発射、一部は住居地にも着弾し、民家60~70軒が炎上した。山火事も発生し、民間人3人が負傷した。

 韓国では米韓軍による合同訓練が22日から30日までの予定で行われており、現場海域では韓国軍が砲撃訓練を実施していた。北朝鮮の朝鮮人民軍は声明を発表し、韓国側が先に北朝鮮領海内に砲撃を加えたため、「軍事的な対応措置を取った」と反論している。北朝鮮がNLL近海に砲撃を行ったことはこれまでもあったが、陸地への攻撃は初めてだという。

 ヘッカー米スタンフォード大教授(元ロスアラモス国立研究所所長)は20日に訪朝報告を公表。その中で12日に寧辺(ニョンビョン)の核施設を視察した際、2000基の遠心分離機を収容した新しいウラン濃縮施設に案内されたことを明らかにした。

 北朝鮮側の説明によると、既にこの遠心分離機を稼働させており、年間8000キロSWU(分離作業単位=ウラン濃縮の際に必要な仕事量の単位)の処理が可能と主張したという。ヘッカー教授は施設が本格稼働しているのかについては懐疑的な見方を示しているものの、このウラン濃縮施設が核兵器に必要な高濃縮ウラン燃料の生産にすぐにも転用される可能性がある、と警告したという。

 これまで北朝鮮で確認された核開発はプルトニウム型。長崎に落とされた核爆弾だ。北朝鮮は38キロのプルトニウムを抽出したと申告しており、事実なら、核兵器にして5~7個を製造できる。北朝鮮は広島に投下されたウラン型核爆弾に使用するウラン濃縮実験にも成功したと主張。今回、施設の一部をヘッカー教授に見せた。

 北朝鮮側が砲撃を実行したことの真意については、6カ国協議再開に慎重な米国および韓国に対する軍事的揺さぶりと金正日総書記の3男・金正恩氏への権力継承を確実にするための国内向け行動の両方があるとの専門家の見方が示されている。

 今日の事件は朝鮮半島を中心としたアジアがいかに危険でリスクの高い地域であるかを改めて浮き彫りにした。のんびりと紅葉も楽しめなくなっているのが日本の現在置かれている状況だ。深刻である。しかし、そこから逃げることはできない。徹底的に付き合っていくしかあるまい。

 それにしても、気になるのは日本政府がこうした危機に直面してどれだけ自前の情報を持っているかだ。持っていなくても、どれだけ確度が高い情報を入手できたかだ。尖閣諸島や北方領土対応で外交・軍事音痴ぶりをさらけ出した菅政権には不安が募るばかりだ。

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