スーザン・ボイル『夢破れて』

 「一夜にして名声を手に入れたシンデレラ」と呼ばれる49歳の歌姫、スーザン・ボイルのデビュー・アルバム『夢破れて(I Dreamed A Dream)』(輸入盤)を買った。例によって新宿西口の地下を歩いていたら、イベントコーナーから聞こえてきた。「癒し系音楽のナンバー1」と銘打ってあった。年末、郷里に帰るロング・ドライブの中で聴くのにぴったりだ。

 正直言って、1年前のNHK紅白歌合戦にゲスト出演するまで名前も知らなかった。その後、一度かなり調べ、you Tubeの動画サイトで何度も視聴した。CDを買ったのはもちろん電車の中でiPod Touchで聴きたいとも思ったからだ。

 音楽のある生活とはもう何十年も遠ざかっていたが、小型電子端末のおかげでまた聴くようになった。聴きたいときに気軽に端末を取り出してイヤホンを耳に差し込むだけ。それだけで、その世界にたっぷり浸ることができるのは喜びだ。若者なら誰でも、どこでもやっていることだが、いったん音楽から離れると、また戻るにはそれなりの動機付けが必要である。

 しかし、気づいたのはサウンドに浸っていると、思考がストップすること。着想、連想、発想も停止することだ。これは困るな、とも思う。脳は常に働かせておきたい。脳が働くためには脳の周辺を静寂で囲い込んだほうがいいように思う。音楽に浸る効用もあるが、浸ることで刺激が回避されることもあるのではないか。着想、連想、発想を生むメカニズムとの関係でもう少し考えてみたい。

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