新春フォーラム2011

 2011年の見通しやそれを踏まえた投資戦略を考える「新春フォーラム2011」(日興コーディアル証券主催)が8日、東京国際フォーラムで開催された。第1部の「今年の日本・世界経済の見方」と題して基調講演を行ったのは経済評論家の大前研一氏(1943年2月~)。

 同氏は米系経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーで活躍した経営コンサルタントとして有名だ。テレビ番組や著作では知っていたが、生の講演を聞いたのは初めてだった。私より5歳年上だが、元気なおじさんだった。自分の信念に則って生きているアクティブ・シニアの典型だ。かくありたいと思った。

 大前氏は世界経済が4つの地雷を抱えていると指摘。①米国経済が着実な回復を維持できないリスク②欧州信用リスクの国別ドミノ倒しが止まらない恐れ③日本の国債販売が行き詰まりか空売りに襲われるリスク④中国の不動産バブルが破裂しそれが暴動につながるリスク-だ。

 これら4つの地雷はみんなつながっており、1つが爆発すれば、他の地雷にも火が点く。世界はハイパーインフレに襲われ、大変な状況に直面する。そういうリスクを抱える時代に生きていることをしっかり認識し、そうした状況に直面した場合を想定した資産プランを練っておくべきだと主張する。

 大前氏がハイパーインフレに突入しても生き残れる国として名前を上げたのは政府債務の少ない国だ。財務のしっかりしている中国や国民が年金を積み立てる必要のないほど健全財政のノルウェーやオーストラリア、ドイツ、カナダ。

 日本はどうか。日本にはこれまでに培ってきた技術や伝統、知恵など世界に誇れるすばらしいものがあるものの、自分の良さ、強さが分からない。政府の経済・景気対策も日本の国の中だけを考えていた結果、長期低迷の現状を招いた。

 同氏によると、先進国の景気対策や産油国などの過剰マネー(不要不急資金)は今や8000兆ドル。先進国に投資しても1-2%の低いリターンしか期待できない。半分は高リターンの期待できる新興国にシフトする流れが定着。当然のことながら、新興国経済は早く回復するものの、先進国は後回しだ。つまり、お金の流れが変わったのだ。

 「雇用は日本では増えませんよ。待っててもじり貧になるだけ。明るいところに行きましょう。日本の技術や伝統を評価してくれるところは世界にたくさんありますよ」と大前氏。シニア世代も引退などしているときではないのだと同氏は煽る。

 グローバリゼーションの流れは元に戻らない。坐して死を待つよりか、世界に打って出るしかないのかもしれない。若い人は当然そうすべきだと思うが、シニアもそうせよと言われると辛いものがある。しかし、どうせ死を覚悟するのならば、坐して衰弱しながら死を待つようも、打って出て倒れるほうを選択すべきなのだろう。問題は意欲、気力、念力。それをどう引き出すか。生きざまが問われる時代だ。

 大前氏の指摘でほかに面白いと思ったのは以下の点だ。

・私鉄は日本の奇跡だ。都心にスラムができず、平和で住みやすい都市づくりに役立った。スラムのできなかった大都市は日本くらいだ。トータルでやれたのは日本の知恵だ。これをパッケージ化して途上国に提案できたらすばらしい。新興国は本当に必要としている基盤を提供できるのは日本ではないか。

・世界で今繁栄しているのは国家ではない。300万人から1000万人程度のスペースだ。将来計画をしっかり立て、世界の資金を呼び寄せることだ。

・現行の戸籍法がある限り、日本では子どもは増えない。デンマークではどの親から生まれたかは問わない。政府がデンマーク国民であることを認定するだけだ。フランスだって、今や私生児のほうが過半数以上だ。嫡子か非嫡子かで国家から差別されるようでは人口が増えるはずがない。

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