”不条理”な菅再改造内閣スタート

  菅再改造内閣が14日夕、発足した。改造が必要とは思えなかったが、野党が多数を占め、仙谷官房長官と馬淵国土交通相の問責決議を可決した参院が2人を交代させない限り、24日召集の通常国会の審議に応じないとの強硬姿勢を貫いた結果、改造を余儀なくされたというのが真相らしい。

 土曜日の15日午前、例によってBS朝日とテレビ東京の政治番組をはしごしたら、前者には枝野幸男新官房長官、後者には仙谷由人前官房長官(新民主党代表代行)が生出演した。枝野氏は仙谷氏の子分的な存在だが、一緒に出演した石原伸晃自民党幹事長は史上最年少(46歳)での枝野氏の官房長官就任について「政界はジェラシーが渦巻いているから気をつけろ」と”激励”していたのが印象に残った。

 

 「激論!クロスファイア」のキャスター、田原総一朗氏は「民主党と自民党の差がよく分からない」と指摘。枝野、石原両氏に両党の違いを質した。普通、どの政党にも、「政党の憲法」と呼ぶべき綱領が存在するものだが、民主党にはそれがないという。

 マニフェストはあるものの、それは選挙のための政策綱領だから、選挙対策そのもの。そのままうのみにはできない。それに比べ、党綱領は「政党の憲法」。党として目指す社会像や実現すべき政治目標などを示すものだ。それが民主党にはないのだ。

 党綱領に代わるものとしては「基本理念」があるものの、1998年4月27日の結党時に発表したもので、政権与党になった現在は時代に合わなくなっているようだ。菅首相は昨年12月、党綱領の策定を岡田幹事長に指示したが、簡単に結論が出るような情勢ではない。

 民主党の「私たちの基本理念~自由で安心な社会の実現をめざして~」は紙1枚に書かれた程度のもので、「憲法」と呼ぶにはあまりにもそっけないし、具体性を全く欠く。「私たちのめざすもの」として掲げるのは以下だ。

第1に、透明・公平・公正なルールにもとづく社会をめざします。
第2に、経済社会においては市場原理を徹底する一方で、あらゆる人々に安心・安全を保障し、公平な機会の均等を保障する、共生社会の実現をめざします。
第3に、中央集権的な世界を「市民へ・市場へ・地方へ」との視点で分権社会へ再構築し、共同参画社会をめざします。
第4に、「国民主権・基本的人権の尊重・平和主義」という憲法の基本精神をさらに具現化します。
第5に、地球社会の一員として、自立と共生の友愛精神に基づいた国際関係を確立し、信頼される国をめざします。

 これがすべてだ。これでは同党の理念に共感して行動に参画する気にとてもならない。空疎で、内実が皆無だ。こんな理念で済ませている同党の見識はこの程度のものなのだろうと思うだけだ。失望した。「基本政策」をみれば目指す政策を知ることができるが、やはり憲法が欲しい。

 今後の政局はどう展開していくのか。民主党政権が誕生した2009年9月から1年4カ月。鳩山由紀夫前首相は8カ月で政権を投げ出し、菅直人現首相が後を引き継いだ。野党から政権与党になって、政権運営の難しさに七転八倒しているのが実態だ。

 石原自民党幹事長は、「マニフェストを大きく変えるんだったら総選挙を行って国民の声を聞くのが筋だ」と主張。これに対し、枝野官房長官は「マニフェストの理念・哲学・方向性は決して間違っていない。4年間ぎりぎりまでやってみてダメかどうか見極めたい」と譲らない。

 国際世界では政治・外交、経済、軍事を含め、暴風雨が吹き荒れている。それなのに、日本の政界はコップの中の不毛な紛争に明け暮れている。本人たちにとっては死活問題かもしれないし、戦わなければ倒されることも確かだが、良識ある人たちはそんな政界に呆れているはずだ。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.