サンデル教授「大震災」特別講義

 マイケル・サンデル 究極の選択「大震災特別講義~私たちはどう生きるべきか~」をNHKで見た。東京、上海、ボストンの3都市・国を同時中継しながら、各国の学生に対して今回の東日本大震災について講義した。

 サンデル教授がハーバード大で行っている大人気の政治哲学講義は昨年4月からNHKで、「ハーバード白熱講義」として放映されたことで日本でもブーム化、本も飛ぶように売れるなど、社会現象化していることは知っている。しかし、そういうものにはすぐ飛びつかないタイプの人間もおり、私もその1人。

 書店で『これからの正義の話をしよう』が視野に入ってもあえて手に取り、ペラペラめくることもしなかった。それがこの日は大震災に絡んだ特別講義ということもあってつい見た。そして「なるほどな」と思った。日本の大学の一方方向的授業しか知らない元学生にとっては魅力的だった。知的刺激を受ける講義内容だった。

 絶妙な話術と問い掛けによって、学生たちと対話をしながら授業を行っていく「ソクラテス方式」の講義がサンデル教授の白熱教室。学生に自分自身で考えるように誘導するのがうまい。テクニックだろう。「自分自身でいかに考えるかを学ぶこと」が最高の教育で、同教授はそれを実践しているわけだ。

 こんな講義なら誰だって受けてみたいと思うはずだ。サンデル教授の授業がハーバード大で大人気だということは他の講義がさほど面白くないということなのかもしれない。受けたことがないから分からないが、アメリカの大学の授業がどれもこれもみなすばらしいとは思わない。退屈な講義もあるはずだ。むしろ、そのほうが多いのではないか。

 特別講義では「危機への日本人の反応をどう思うか」「日本と他の国での反応の違いに驚いたか」「原子力発電を今後どうすべきか」など興味深いテーマについて3都市の学生らの意見が取り上げられた。どの発言が正しいのかが重要なのではなく、どれだけ深い議論を引き出すことができるかがポイントだ。

 深く考え、それを基に議論を戦わせる経験が日本人には圧倒的に不足している。意見を戦わせるという習慣・伝統をあまり持たない。教育も知識の一方的伝達に重点が置かれてきた。教育とは何かを考えさせられる番組だった。
 

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