『野いばら』

野いばら

 

読了したのは銀座5丁目の雑居ビル6階のスナック「凱旋門」。昼のランチカレーが売りの店で、素朴で薄味のこの店のカレーが気に入っている。北朝鮮の金正日労働党総書記が突然、心筋梗塞で死去したニュースが流れ、世界が騒然とした直後だった。

舞台は江戸末期の横浜。江戸幕府の動きを探るべき、攘夷の嵐が渦巻く横浜に乗り込んだ英国海軍情報将校エヴァンズ少佐が日本語教師ユキと出会い、お互いに魅せられていく激動の時代が、エヴァンズの日記を通して静謐に語られていく。英コッツウォルドの女農園主から託されたその日記を、150年後に出張先のアムステルダムで読む種苗会社勤務の日本人・縣和彦。

時代の激しい動きと静謐な2人の関係を媒介するのが「野いばら」だ。烈しく、そしてせつない。見事な作品と言わざるを得ない。

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