『いまアメリカで起きている本当のこと』

 

書名:『いまアメリカで起きている本当のこと』~日本のメディアが伝えない世界の新潮流
著者:日高義樹
出版社:PHP研究所(2011年4月1日第1版発行)

 

■日本国民にとって最悪なのは、いま日本を動かしている民主党政権が、イデオロギー信奉主義の集団だということである。国と国民の利益のために、現実的に問題を解決することが政治家と政府の仕事だと思っていない。

■アメリカの私の友人たちが最も恐れているのは、民主党政権が現実的に問題を処理できなければ、やがて中国の影響力が強く日本に及んでくることだ。中国は日本の軍事力強化を恐れている。・・・中国にとっては、日本に軍事力を持たせないまま、中国の影響下に抱え込むことが最も望ましい状況である。ワシントンから見ると、日本の民主党政権はそうした中国の動きを全く警戒していない。中国で商売をしている日本の企業に歯、これからは中国とも、アメリカに対するのと同じ距離を持ってつきあうべきだという、いわゆる「等距離外交」を主張する人々がいる。だが、日本の安全保障という国の存続に関わる問題を考えずに中国に接近する等距離外交は、日本にとってきわめて危険である。

■2010年11月のアメリカの中間選挙で、ブッシュ共和党と呼ばれる議員たちが大勢選ばれた。アメリカのビジネスと保守勢力、退役軍人たちを背景にしている健全保守派が大勝して、社会主義的な政策を推し進めていたオバマ大統領が国民から不信任された。この大きな流れの中で最も目立つのは、日本派の人々が甦ったことである。日本の企業や技術を大切なものと考えている政治家たちは、中国一辺倒のオバマ政権のもとで息を潜めていたが、健全保守勢力が力を取り戻したので、日の当たる場所に出られるようになった。

■オバマ政権が成立してすぐ、明らかにトヨタ叩きと見られるリコール問題が持ち上がり、「トヨタの自動車は危険だ」という1大キャンペーンがアメリカ全土でくり拡げられた。アメリカの民主党の政治家やマスコミが協力して始めたものである。その後、トヨタに対する批判があっという間に消えてしまったのは、政治的に無理にでっち上がられた問題だったという証拠である。

■アメリカの国民がいま最も懸念しているのは、オバマ大統領がこの2年間に作り出した15兆ドルにのぼる財政赤字である。このままいけば、アメリカの経済そのものが破綻してしまうのではないかと心配している。このアメリカ人の考え方を代表したのがティーパーティーである。ちなみに、ティーパーティーが「お茶の会」と日本で訳されているのは間違いである。課税(TAXED)のT、十分(ENOUGH)のE、すでに(ALREADY)のA、つまり「もう十分課税されている」というフレーズを冠したティーパーティーの人々は、税金を下げ、政府を小さくすることを強く求めている。

■ロビーストは、アメリカの政治を裏から動かしている。アメリカの政治はロビーストなしには語れない。進歩派のロビーストも多いが、力があるロビーストはの多くは保守系で、いまワシントンで「Kストリートグループ」といえば、企業を背景とする強力なロビーストやロビースト集団を意味している。

■フロリダ州とカリフォルニア州で、なぜ日本型新幹線が拒否されてしまったのかは明らかではないが、ドイツの高速鉄道よりはるかに優れている日本の新幹線が拒否されてしまったのは、「日本の新幹線」ではなく、社会主義の民主党政権の「日本」が嫌われたからである。ブッシュ前政権は、アメリカに原子力発電所をつくるために政府が援助および保証する政策をとり、その政策に基づいて日本企業が、アメリカで新しく原発をつくろうとしてきた。ところがアメリカが最近、地下深くのオイルシェールを天然ガス化する技術の開発に成功したためエネルギー事情が大きく代わり、アメリカ政府は、原発を援助するかどうか迷っている。このため日本企業がアメリカで建設しようとしている原発の建設計画が予定通り進まなくなっている。

■保守のブッシュ共和党がワシントンに戻り、ワシントンの論調が日本びいきになって、日本とアメリカの関係が良くなっているはずなのに、現実にはそうなっていない。むしろ悪くなってすらいる。なぜ、このようなことになってしまったのか。アメリカからすれば日本との関係が変わって、日本が信用できなくなったからである。問題は日本の民主党政権にある。鳩山前首相が実際にやったのは、自民党政権がアメリカに約束した普天間移転計画をひっくり返すことだった。その結果、アメリカにおける日本の信用が恐ろしく傷つけられた。

■普天間基地は、アメリカの戦略が大きく変わってしまったため、これまでほどは重要でなくなっている。だが長い間日米で話し合われてきた普天間基地問題について、日本の民主党はアメリカ政府ときちんとした話し合いを行っていない。国務省のキャンベル次官補は「日本の民主党政権が何を考えているのか、まるでわからない。話し合いができないので、私たちが何を考えているか、伝えることすらできない」と語った。

■ワシントンの政治家たちは、ああらゆる問題に優先して、国家の安全を大切だと思っている。アメリカの人々は神を信じ、個人の尊厳を最も大事と考えている。個人の尊厳を維持するためには、言論や宗教の自由などを尊重しなければならないが、個人と個人主義の限界は国家である。現在の国際社会においては、国家が存在と存続の単位で、法律は国を超えてその権限と力を及ぼすことはありえない。1648年、ヨーロッパの国々の間で締結されたウエストファリア条約は、いかなる国も他国の問題に介入してはならないと定めている。まさに国家と法律の限界を示しているのである。

■アメリアカの人々は子供に至るまで、国家を守ることが自分たちの法律を守ることであり、個人の尊厳を守ることでもあると考えている。ところが日本の民主党の政治家たちは、国際主義とそれに基づく平和主義を原則にしている。日本の民主党の政治家にとって、国家を守ることは絶対的な道徳ではない。その結果、国の安全を守る究極の兵器である核兵器をないがしろにすることになっている。

■これまでの日本の政治家たちは、そういった主張を日本という国の中にとどめ、外国の元首や責任者との話し合いではオクビにも出そうとしなかった。「アメリカの核の傘は要らない」と発言したり、核兵器持ち込みに関する秘密の取り決めを暴露したりするようなことはやらなかった。ところが日本の民主党の政治家たちは、世界の現実から全く隔離されたところで育ち、アメリカの軍事力の保護のもとにのうのうと生きてきた。国家についても国家の安全についても考えることなく、日本国家の権力を握ってしまった。

■アメリカの人々はこれまで、日本人の勤勉さ、律儀で正直な性格、自分たちになる日本の文化を尊敬してきた。だが日本の民主党がこの信用を壊してしまっために、アメリカと日本の関係が変わってしまった。アメリカの人々は、日本の民主党の政治家だけでなく、信用ならない政治家を指導者に選んでしまった日本人、日本という国に対しても不信をとのらせている。

■世界で通用する平和主義は、それぞれの国家が基本となり、世界の案g亭と安全を維持していくべきだという考えが基本になっている。日本の民主党の行動は、「国連があり、国際社会の秩序が保たれていれば、国家は要らない」と言っているに等しい。アメリカ人のほとんどが、そうした日本の民主党政権の考え方は間違っていると考えている。アメリカの政治家からすると、日本の民主党はまさに逆立ちして世界を見ている。日本の民主党は、アメリカ人の目には全く信用のならない異次元の存在なのである。

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