「元気の出る援助」とは何か

田中明彦JICA理事長(真ん中、日本記者クラブ)

 

独立行政法人国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長の昼食会が13日、日本記者クラブで開催されたので出席した。田中理事長は東京大学副学長(国際担当)からこの4月1日付で就任したばかり。国際政治そのものの援助について、国際政治学者がどういう話し方をするのか関心があった。

田中理事長は日本のODA(政府開発援助)の歴史について停滞、批判、組織再編を経ながら、世界システムの変化に対してもそれなりに対応してきたと総括。明治維新後から戦前までの国家建設の経験や援助受入国として高度経済成長を達成した開発経験に基づき「自助努力への支援」に絞ったのが日本のODAの特徴であると分析した。

「自助努力支援」のためには具体的に①オーナーシップ(受入国側の強いリーダーシップと責任感)②成長志向(経済インフラの整備と民間セクター開発)③能力開発(新しい知見の受入国側システムへの取り込み)-の3つのアプローチを採用し、アジア地域では多くの国で経済成長と貧困削減を同時に達成し、日本的アプローチが極めて有効であったとの認識を示した。

田中理事長は日本のODAが新たに直面している課題として、人々があまねく利益を享受できる包摂的成長(Inclusive Growth)に対するニーズに応え、格差と不均衡をまず挙げ、その解決に向けたアプローチを取っていく必要性を強調した。また「人間の安全保障」(人々が恐怖や欠乏から解き放たれ、安心して生存でき、人間らしい生活ができる状態をつくること)や気候変動、感染症対策、大規模災害など地球規模の課題への取り組みの重要性を指摘した。こうした取り組みの実践の場がアフリカ開発だ。

こうした日本のODAの歴史・特徴・課題を踏まえた上、「元気の出る援助」として、①平和を構築する援助(復興支援・国づくり支援、局地紛争対応、紛争周辺国支援)②市場が拡大する援助(包摂的成長と広域インフラ整備、民間連携支援)③知識を高める援助(地球規模の諸課題を対象とする途上国との国際弓道研究の推進)④友情の輪が広がる援助(国内研修、専門家・コンサルタント派遣、JICAボランティア、南南協力)-を挙げた。

日本のODAはかつて世界1位を続けたこともあったが、ネット(実質支出純額=借款の返済分を差し引く)では現在世界5位。しかし、グロス(実質支出総額)では世界2位で、存在感は大きい。組織再編を経て、「1援助機関として、これほど多いオファーできるメニューを持っている組織は世界にもない」(田中理事長)。それほどの存在だ。「こういうJICAが頑張ることで日本も強くしていきたい」(同)と意気込みをみせた。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.