『11.25自決の日』

テアトル新宿ロビー

 

作品名:『11.25自決の日』-三島由紀夫と若者たち-
監督:若松孝二
上映館:テアトル新宿

 

三島由紀夫が1970年11月25日、楯の会の森田必勝らとともに自衛隊の市ヶ谷駐屯地に乱入し、「天皇陛下万歳」を叫んで自決したことを、私は同日、友人と2人で高田馬場駅近くにいた。事件を知ったのは新聞の号外だった。

三島由紀夫の名前はもちろん、高名な文学者として知っていた。友人の間でも評価は高かったが、私には彼のぺダンティックな佇まいが好きになれず、彼の作品を読んだのは数冊にとどまっていた。文学的な価値は知らないが、自分の中での価値はゼロに近かった。

しかし、そのことと彼が自衛隊に乱入し、隊員に決起を呼び掛けるすさまじいまでの行動に衝撃を受けたこととは無関係だ。何が彼をして、あれほどまでの行動に駆り立てたのか分からなかった。

大学のキャンパスで知り合った4年先輩に、同じく楯の会のメンバーがいた。その人物とは彼が病気で亡くなるまでの間、断片的に話を聞いたことを覚えているが、幾分なりとも新左翼にかぶれていた自分と、紋切り的に言えば右翼だった彼との話はどうしてもかみ合わず、深い話はできないままに終わった。

三島由紀夫事件については昔の思い出が少し関係しているので、この映画が上映されると知って、見ずにはおれなかった。本当は事件のとき、一緒にいた友人とともに映画も見たかったが、その友も1年前に他界した。1人で見るしかなかった。

若松孝二監督は4年前の2008年には『実録・連合赤軍』を発表している。神戸で見た。監督は左翼思想の持ち主だと思っていたら、今回対極的な作品を発表した。不思議に思っていたら、映画館で売っていた『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(遊学社)に書かれていた。

「僕は、どうも左翼だと思われているんだけど、右でも左でもないですよ、もともと。僕がこだわっているのは、あの時代なんでしょうね。やっぱり、戦後のあの時代に何が起きたかを、きちんと描きたい。そして僕は、人間を描くことを通してしか、それを表現できない。『レンセキ』では、左の若者たちを描いたのだから、今度は、逆の立場で同じように立ち上がり挫折していった存在を描きたいと思った」

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