シェール革命で変わる世界

国際ブリーフィング風景

セミナー会場風景

 

シェールガス・シェールオイルと呼ぶ新型資源が世界に「革命」を起こしている。少し前までは石油・天然ガス資源は有限で、いずれ枯渇するというのが世界の常識だった。それが在来型ではない、非在来型の資源が登場し、「有限」の危機が大きく遠のいた。それを可能にしたのはテクノロジーだ。

シェール革命の起こっているのは米国。既に本格的な生産が始まった。革命がエネルギー分野にかかわらず、安全保障の分野にも大きな影響を及ぼし始めている。日本にとっての最大の関心は米国からのLNG輸出動向だ。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がこの問題に焦点を当てた国際セミナーを開催したので参加した(2013年2月7日)。

ガス鉱床図(ウィキペディア)

ガス鉱床図(ウィキペディア)

 

●シェールガスは製造業のプロセスで生産される。コストが問題だ。石油は資源の規模がどの程度かという視点で見ていたが、シェールガスの場合はそれとは違ってテクノロジーで考えなければならない。

●シェールガスが革命なのは連邦政府の規制対象ではなく、地元州政府の認可を得られれば良い点だ。

●米エネルギー省(DOE)は向こう2-6カ月後には数件の日本向け輸出ライセンスを認可する見通しだ。

●1年前まではエネルギー不足や需要増大、資源不足が米政策の前提だったが、シェール革命の結果、様相が一変、日々変わっている。

●Shale Play(シェールプレイ、実際にシェールガスの採掘可能地域)は当初5州に集中していたが、その後28州に拡大し、今も増大している。それに伴い、経済効果に政治的影響力も増大している。州当局は認可することで収入が増えるほか、雇用も創出できる。

●米国のガス輸出は自由貿易協定(FTA)締結国を優先することが定められている。しかし、増産余力が高いこともあって非FTA締結国への輸出を認めることの是非が議論されている。外交政策や軍事政策とも密接に絡む。近く上院公聴会で議論。

●シェールガス生産は米国中心。他地域は時間がかかる。増産体制に入るのは10-20年先。

●中東原油の輸出先は2035年までには90%がアジア向けとなる。ホルムズ海峡から西に向かっていた原油が東に向かう。北米が純輸出国として台頭する。

●米国とサウジアラビアとの関係は「天国で作られた結婚」と呼ばれる。いわば封建領主と農民のような関係だった。しかし、米のシェールオイルの登場でゲームは抜本的に変わるのか。恐らく米国は2020年まではサウジからの石油輸入を続けるだろう。

●中東原油に対する米国の依存度が低下することにより、地政学的な影響は現れる。

●米国の製造業はシェールガスやシェールオイルによる低燃料・原料費が強み。中東は豊富な埋蔵量を背景とした廉価な燃料費が強み。中国は燃料費は必ずしも廉価ではないものの、相対的に廉価な人件費が強み。欧州は現時点では燃料費も人件費も廉価ではないところが弱みだが、域内でシェールガスが生産されれば状況は変わるかもしれない。ただ環境問題は付いて回る。

●日本はシェールガスもシェールオイルも期待できず、人件費も廉価ではない。対応を真剣に考える必要がある。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.