史上最高齢75歳芥川賞受賞作家が語る

黒田さん

聞く方も高齢者が目立った会見だった

 

テーマ:著者と語る『abさんご』
会見者:黒田夏子(第148回芥川賞受賞)
日本記者クラブ@2013年2月15日

会見が終わって会見場から外に出たら、受付の上に「史上最高齢75歳 第148回芥川賞受賞作 abさんご 黒田夏子」と書かれた宣伝カード(文藝春秋)が置かれていた。生死の交錯する、「昭和」の家庭で育ったひとり児のたどる運命とは?とも書かれていた。作品を読まないまま、とにかく「史上最高齢芥川賞受賞作家」の顔を見るというミーハー的興味で出掛けた。

申し訳ないが、最初から作品よりも、人物に関心があった。本人の話はそれこそ3分ほどで終わり、「テーマとか主張のある作品ではないので何でも質問を」で会見は始まった。結局、最後まで分からなかった。人に分かってもらおうと書かれた文章ではなく、自分の書きたい書き方(横書きで、ひらがなを多用し)にこだわった文章だ。

書くべきテーマに沿った文章を、誰が読んでも分かるように書くように訓練されてきたジャーナリストの書く文章とは最初から違う。そうした文章こそ、書かれるべき文章だと職業的に考えているジャーナリストにとっては、何とも合点のゆかない作品ではないか。

実際、会見ではそうした点に関する意見表明や質問も多く出たが、それに対する黒田氏の回答は「作品を作ること自体が目的。その作品を通じて何かを伝えたいと思っているわけではない。書かれている内容は材料でしかない。だから、あらすじもない。作品そのものを受け止めていただきたい」と答えた。

●(横書きは読みづらいな、縦書きでなく横書きにすることの効用とは何か)日本語はどんなものでも縦書きが普通。「文学作品は縦書きである」ことになっているが、それは単なる習わし。それを一度白紙に戻したいと思った。30年ほど前から横書き。それが自分の資質に合っていた。「横書きがいいですよ」ではなくて、「横書きがあってもいいですよ」。ただそれだけですよ。

●(なぜかながきにこだわるのか、読者に負担を強いるが)何かを壊したいわけではありません。漢字を否定しているわけでもありません。作品の言葉の使い方が実用書とは違う。

●(75歳という年齢について)75歳で受賞したことがきっかけで作品を読んでいただけるのはいい。たまたま75歳になってしまっていた。

●なるべく語源にこだわりたいという意識はずっとあった。小3で終戦、小5で旧仮名遣いから新仮名遣いに、中学では当用漢字や常用漢字が定められた。言葉が上から押し付けられた。外から変えられることをずっと眺めてきたので、自分の言語感覚で考えてもいいのだと受け止めていた。

●食べるためには別の仕事を持っていた。いろんな仕事をしたが、特に校正者として長く働いた。

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