「心のキズを形に残して掃き出すことが重要だ」

会見する桑山紀彦氏

会見する桑山紀彦氏

 

テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」心のケア
会見者:心療内科医・桑山紀彦
2013年3月5日@日本記者クラブ

◍桑山氏は1994年にオスロ大学で心理社会的ケアを学んだ。国際協力NGO活動を世界各地で行ったのち、2009年11月、宮城県名取市に「東北国際クリニック」を開設。自らも被災する。2011年9月27日に同クラブで「心のケアとは語ること」のテーマで会見している。

◍被災地の課題は①どうやって津波に向き合うか。被災者の8割は「もう見たくない」との思いで、被害の実態から目を背けている。津波の被害と向き合っていないのではないか。それは被災者の心が動いていないからではないか。「心のケア」の課題は依然残っている。

◍②は何を残し何をつぶすか。未来の継承への課題だ。遺産として残す選択の時期に来ているのに、何もできていない。自分たちが受けたキズを形に残して掃き出すことが重要だ。過去を否定せず、あの日のことを丸呑みすることが必要だ。

◍3年目の課題は①「心理社会的ケア」のマニュアル作り②大人のための心のケア③未来の継承への取り組み-だ。③では「閖上(ゆりあげ)の記憶」を発展させたい。語り部と案内人の養成。

◍被災3カ月目に、小学生と中学生の2つのバージョンで「スカイルーム」(心理社会的ケア)を開設。学校の先生たちや父兄の反応は「寝た子を起こすな」。先生たちは特に父兄からのクレームを懸念した。われわれはそうしたクレームを受けたことはなかった。

◍大人の自殺率は低かった。東北の人は我慢強い。我慢していた。ところが、この1月くらいからドドッツと来ている。これから半年くらいがピークだろう。我慢切れだ。こちらは「そろそろ語ろうよ」と言っているが、それが伝わっていない。語る土壌が随分薄れていると思う。

◍ドキュメンタリーはもうコリゴリだ。今こそフィクションが必要だ。

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