世界経済動向

渡辺博史氏

渡辺博史氏

 

テーマ:最近の世界経済の動向-マクロ経済・金融を中心に
会見者:渡辺博史JBIC(国際協力銀行)総裁
2014年2月14日@日本記者クラブ

JBICは株式会社ではあるものの、日本政府100%出資の特殊銀行。元の日本輸出入銀行だが、再編され、現組織は2011年に定められた株式会社国際協力銀行法に基づいている。日本の輸出信用機関だ。

海外資源の開発・取得や日本企業の競争力維持・向上のための融資を行う。最大の役割はグローバル・インフラ投資、なかでも成長センター・アジアへの投資だ。民間銀行では大きすぎるカントリーリスクを引き受けるのが仕事だ。

それにしても最近のJBICの出資・融資活動は目覚ましい。未曾有の財政危機と言いながら、さまざまなプロジェクトに気前よく、何千億円という資金を投入しているからだ。もちろん将来的な資源確保やインフラ投資のためには巨額の資金は必要で、先を見据えた投資は必要だ。しかし、無い袖は振れない。

JBICの2013年年次報告書によると、2012年度の資金調達額(実績)は2兆5998億円。そのうち最大なのは外国為替特別会計からの借り入れで1兆7449億円だった。全体の67%を占めた。財政投融資からは4000億円、政府保証外債2053億円、回収金などその他自己資金1806億円だった。

JIBICには財政機関債の発行が認められているが、12年度はゼロだった。11年度は500億円が発行された。13年度予算では200億円と記載されている。

JBICは13年2月、日本企業の海外M&A、インフラ、資源分野などにおける中堅・中小企業を含め日本企業の海外展開を推進する目的で「海外展開支援出資ファシリティ」を創設。同年4月には「海外展開支援融資ファシリティ」も新設した。

さらには日本企業の製造拠点の現地化が進行することに伴い、日本企業の海外拠点の取引支援に向けた融資制度を拡充する一方、09年創設の「アフリカ投資ファシリティ」を「アフリカ貿易投資促進ファシリティ」に発展的に改編。

また、日本企業のロシアへの投資・事業展開を支援する「日露投資プラットフォーム」の運営も始めた。JBICはまさに日本の海外経済戦略の先兵だ。

渡辺博史氏は2008年10月からJBICの経営にタッチし、13年12月、奥田碩総裁の後任となった。大蔵省国際金融局長、財務官を歴任した元通貨マフィア。海外紙誌のマンガを読み解きながら世界政治・経済を解説した。

10年6月2日の会見でも同じような解説を聞いたことを覚えているが、今回も氏の博識ぶりには驚愕した。会見内容を自分なりに理解しようと試みたが、無理だった。それで、日本記者クラブサイトに掲載された鈴木美勝時事通信解説委員の「会見リポート」を掲載させてもらうことにした。

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“渡辺流”解説 漫画で読み解く世界経済

 

「最近の世界経済の動向」と題して行われた記者会見は型破りだった。延々40分間余にわ たって、フィナンシャルタイムズ紙や英エコノミスト誌などに掲載された漫画をひとつひとつパワーポイントで紹介、世界情勢をシャープに活写する渡辺流の解 説は、まさに名人芸の域に達していた。

ユーロを懸命に支えるメルケル独首相の怒り、最悪の危機を脱したもののL字型回復しか見込めぬスペイン経済、ヘルスケアに足を取られたオバマ米大統 領の苦悩、そして第1の矢しか飛んでいないアベノミクスの危うさ等々―渡辺氏は難題山積の国際情勢を描いた漫画を通して世界のいまを読み解いてみせた。そ の手法は霞が関―大手町では知る人ぞ知る渡辺流だが、漫画に込められたメッセージを子細に読み取る能力と平易に解析する表現力は、並みのエコノミストや学 者にはまねできないだろう。

ちなみにSF好き、Mystery好きの少年・青年として育った氏は、本職のマクロ経済・金融に関する論文以外に『ミステリで知る世界120カ国』をも上梓した、硬軟両用の書き手でもある。こういう人を才人というに違いない。

時事通信解説委員 鈴木 美勝

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