『海賊とよばれた男』

表紙は「日章丸」

下巻の表紙は「日章丸」

 

書名:『海賊とよばれた男』
著者:百田尚樹(ひゃくた・なおき)
出版社:講談社(2012年7月11日第1刷発行)

 

自分の記者生活の中で石油取材の占める割合は大きい。相場商品としての石油や政治・外交上の武器として使った石油輸出機構(OPEC)、産油国や消費国の動向、開発途上国の経済を左右した資源としての石油とそれなりに付き合ってきた。

石油は戦略商品であり、政治商品だ。それが世界の政治や日本の経済を動かした。日本にとっても石油の一滴は血の一滴だった。日本は石油を求めてインドシナに進出し、そして敗北した。

戦後日本の石油エネルギーを牛耳ったのは巨大石油資本・メジャーだった。日系石油会社はメジャーにことごとく蹂躙された。しかし、そんな中で、高く民族の誇りを掛けてメジャーに戦いを挑んだ男がいた。それが國岡商店の店主・國岡鐵造だ。出光石油の創業者、出光佐三その人だ。

彼の生涯を描いた著者の歴史経済小説。上巻はテンポがのろく、小説としては楽しめなかった。しかし、作品の核である日章丸事件に迫る下巻に入ると俄然面白くなった。手に汗握る緊迫した展開だ。小説で、読者をこれだけハラハラ、ドキドキさせる作品も珍しい。

仕事の行き帰りの地下鉄の車中で読んだ。最後は自宅の書斎で読み終えた。いよいよ今日で7月も終わり。明日から8月。今年の夏も本番を迎える。夏ばて防止の滋養強壮剤としての読書だった。楽しめた。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.