コンピューターは2018年に人間の脳を超える
小原凡司東京財団研究員による「中国の軍事戦略」に関するブリーフィングを自分のブログにまとめていた際、「Network Centric Warefare」(ネットワーク中心の戦い)が進めば、ターミネーターの世界が出現するとの指摘があった。
よく分からないので、ネットで調べていたら、孫正義社長によるソフトバンク「新30年ビジョン」発表会(2010年6月25日)のUSTREAM動画を見つけた。どういう関係があるのかと見始めたら、グンと引きつけられてしまった。
ソフトバンクのビジョン発表だが、内容がそれにとどまらない。企業は永遠の存続を考える場合、企業の方向性を明確に定め、DNAを設計するのが経営者の仕事だとし、30年は一里塚だと指摘。300年先を考えたビジョンを語った。これが実に面白かった。動画を見たあと、テキスト起こされたサイトを見つけたので、それも参照した。
人間の脳の細胞数は300億個。80億個の脳細胞を持つチンパンジーの5倍だ。昆虫は100万個、アメーバは1個。しかし、これらは時間が経っても増えない。
ソフトバンクで過去2度にわたって試算した結果、コンピューターのワンチップの中に入っているトランジスタの数は大脳の能細胞数を2018年には超えることが分かったという。わずか8年後、現時点からでは4年後には、「機能的には人間の脳細胞を越える能力をワンチップのコンピュータが持つに至る」。
それでは100年後はどうか。1垓(がい)倍になる。京の上の単位は知らなかった。1垓=1兆の1億倍。200年後は1垓の1垓倍、300年後は1垓の3乗倍。もうこうなってくると、全く想像できない。
300年後も人はパンやコメを食べているだろうし、基本的なものはそんなに変わらないだろうが、コンピューターについては予想もできないような進化をしていると孫氏は語る。そうなると、人間のライフスタイルが変わるのは当然だ。
そうした時代に何が生まれるかというと、「脳型コンピューター」だ。300年後の人間はこれを自由に使っているのではないかと孫氏は予想する。
孫氏によると、脳とは、データ(知識)とアルゴリズム(知恵)を自動的に獲得するシステム。脳は誰かがプログラミングするのではなく、自分で勝手に学んでいく。勝手に考え始める。そういう能力を持つのが人間の脳だ。
孫氏によると、脳型コンピュータはデータを自動集積し、知恵に相当するアルゴリズムを誰かがプログラミングするのではなく、自ら学習しながらプログラムしアルゴリズムを獲得していく。ヤフーやグーグルによって脳型コンピューターの機能は開発されている。
人間の脳は、知識と知恵を使いながらの何を実現しようとしているのか。それは心地よく、快感を感じられる感情の欲望を満たすことだ。
感情の欲望の中でも最も高い次元が「愛」。「愛」を満たすのが脳細胞の求める最も上位の欲望だ。それを目指すことで、むき出しの本能的な欲望は抑えられる。
こうなってくると、コンピューターに感情を持たせるべきかどうかが議論になってくる。頭脳型コンピューターに「愛」という感情を持たせ、「超知性」を実現していくのがコンピューターの正しい進化だと孫氏は個人的な考えを述べる。
ソフトバンクのビジョンを語りながらも、人間の将来の姿をも展望させたプレゼンテーションはなかなかのものだった。